ふたつの橋

  • 土曜の窓, 特集
  • 2023年5月20日

 ロシア極東最大の都市ウラジオストクは金角湾を中心に市街地がすり鉢状に広がっている。2012年8月、その湾のど真ん中にV字型の美しい斜張橋が架かった。全長2・1キロ、コンクリート製の2本の主塔の高さは260メートルに及ぶ。

 当社はこの橋の建設予定地にイタリア製の生コン製造プラントを持ち込み、当時10万立方メートルを超える橋梁用コンクリートを納入した。APEC(アジア太平洋経済協力会議)を成功させ、アジア太平洋国家としてデビューを果たすと意気込むプーチン大統領の肝いりの国家プロジェクトだ。昼夜ノンストップの大量打設となる耐圧盤の施工には入れ替わりで20人を超えるエンジニアを道内から派遣。アドレナリンが湧き出るような”お祭り騒ぎ”を、つい昨日のことのように思い出す。

 実はこの話には続きがある。金角湾大橋の建設が終わって間もない頃。ロシアの建設コンサルから、もう1本、別の大橋の建設に参画してもらえないかという話が舞い込んだのだ。

 計画図を見せてもらった瞬間、嫌な予感がした。場所は黒海の北に位置するアゾフ湾。その出口となるケルチ海峡に全長18キロに及ぶ道路鉄道併用橋を通すというものだ。地図があったら参照してほしい。これが通るとウクライナ領のクリミア半島とロシア側の半島が陸路で直接つながることになる。

 「こりゃどうみてもクリミア狙いの戦車道路だろ!」―。浅学ながらも記者時代に国際政治をかじった身。プロジェクトの筋の悪さをすぐさま感じ取り、早々にお断りの連絡を入れさせてもらった。そう。これこそが18年5月に完成を見たクリミア大橋。昨年10月、テロとみられる爆破に見舞われたのは記憶に新しい。

 NATO(北大西洋条約機構)の武器供与を受け、ウクライナの反転攻勢がいよいよ始まったと伝わる。不当な侵略にウクライナは勝たねばならないが、一方でウクライナを勝たせ過ぎ、プーチンに一発でも核を打たせてしまったら戦略的には大敗北を喫する。核ドミノを制御できるほど人類は賢明なのか、はなはだ疑わしい。

 この稿が掲載される頃、G7(先進7カ国)の首脳は世界に適切なメッセージを広島の地から送り届けているだろうか。今回ばかりは核廃絶ではない。プーチン個人に核の威嚇といかなる使用をも思いとどまらせるために、全人類に結集を促す、決意の宣言が求められている。

 (會澤高圧コンクリート社長)

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