ロシアのプーチン大統領は9日、モスクワの「赤の広場」で、旧ソ連による対ドイツ戦勝記念日に合わせて演説した。ウクライナ侵攻が長期化する中、自国が「本物の戦争を仕掛けられている」と現状認識を表明。ウクライナ東・南部で戦う兵士を誇りに思うとたたえ、勝利に向けて団結を呼び掛けた。
ゼレンスキー政権とそれを支援する西側諸国を「ナチス」と重ね合わせて非難するとともに、ロシア国民に占領地も含めた「祖国防衛」を訴えた。
軍事パレードも、「ウクライナのドローン攻撃」を警戒しつつ実施。独立国家共同体(CIS)の各国首脳が急きょ招待され、孤立したイメージの回避を狙った可能性がある。外国メディアの取材は制限した。
プーチン氏は、中国は第2次大戦で日本の軍国主義と戦ったとも述べた。パレードではクリール諸島(北方領土と千島列島)を防衛するロシア軍部隊も紹介。対ロシア制裁を科す「非友好国」の日本をけん制したもようだ。
パレードには兵員1万人以上、戦車や大陸間弾道ミサイル(ICBM)など約125両が参加。モスクワは厳しい防空態勢が敷かれ、航空機はリハーサル時から姿を見せなかった。
侵攻開始から間もない昨年5月の戦勝記念日には、プーチン氏がウクライナ東・南部の「併合」や動員令、戒厳令を発表するのではないかとささやかれた。いずれも昨年秋にずれ込んだが、現実となった。
今年は戦死傷者20万人以上と推計されるロシア側の兵員補充がプーチン氏にとっての課題。さらなる動員令が予想される中、予備役の国外逃亡を阻止するため、プーチン政権は4月に法改正して「電子招集令状」を導入した。ただ、強制的な招集は国民の反発を招きかねず、まずは志願兵を高給で募集するキャンペーンを展開している。
クレムリン(大統領府)は今月3日、「ウクライナのドローンによるプーチン氏暗殺未遂」があったと発表。「自作自演」説が根強く、ゼレンスキー政権に報復をちらつかせるとともに、国内向けに危機意識を高める意図があるとみられる。