質問に対して、人間のような自然な対話形式で返答するチャットGPTと呼ばれる人工知能が最近話題になっている。その性能は驚異的で、誰でも簡単に利用できるため、それによるさまざまな問題が指摘されている。
学校における問題の一つは、リポートの課題に対して学生が自分の頭で文章を考えることなく、チャットGPTに問い掛けて、その回答文をそのまま提出するのではないかという懸念だ。
実は同種の問題は以前からある。インターネットで見つけたサイトの内容をそのままコピーしてリポートとして提出する学生は今も昔もいる。チャットGPTを使うと、より手間がかからなくなるというだけで、「自分の頭で考えない」という意味で問題の本質は同じだ。
学校におけるリポートは、学生自身のトレーニングのためにある。つまり、自分の考えをどのように論理的にまとめて、どのような表現を用いて文章とするのか、その技術を学ぶことに意義がある。安易にチャットGPTを使っていると、就職試験や入学試験など、スマホが使えない環境で小論文の執筆を課せられたら1行も書けないだろう。
学びの段階を卒業して社会に出たら、計算が必要な時は手計算ではなく電卓を使う。同じように、報告書をまとめる時にチャットGPTを利用することは、人手不足の現代社会では有益なことに違いない。しかし、電卓が社会に普及しても人は手計算の技術を捨てなかった。チャットGPTが普及しても、人は文章を書く技術を捨てるべきではないと考える。
(苫小牧工業高等専門学校教授)