ロシア大統領府は3日、プーチン大統領を狙ったウクライナのドローンによる暗殺未遂が同日未明にあったと主張した。ドローンは2機で、ロシア軍の電子戦システムなどで妨害され、モスクワのクレムリン(大統領府)の敷地内に墜落。負傷者はいないという。
事実なら、モスクワ中心部への攻撃は、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始後初めて。プーチン氏が実際にいたのがクレムリンか、郊外の大統領公邸かは不明だ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は訪問先のフィンランドでの記者会見で「プーチン氏もモスクワも攻撃していない」と関与を否定した。
モスクワでは対ドイツ戦勝記念日の9日にクレムリン隣の「赤の広場」でプーチン氏が観閲する恒例の軍事パレードが予定されている。ロシア側の発表には、国内を引き締め、ウクライナが予告する大規模な反転攻勢に警戒を促す狙いもあるとみられる。
発表後、SNSにはクレムリンにドローンとみられる物体が飛来し、屋根に火が付く動画が投稿された。ただ、瞬間を捉えた動画の一つは、固定の監視カメラでなく手持ちのカメラで落ち着いた様子で撮影されている。
大統領府は「外国の賓客が出席するパレードを前に計画されたテロと暗殺の試み」と非難したが、首脳級が来訪予定の国は旧ソ連構成国キルギスのみ。プーチン氏の今後の予定に変更はないとし、「必要な時と場所で報復措置を講じる権利を留保する」とウクライナをけん制した。
ロシアでは1、2両日、ウクライナと国境を接するブリャンスク州で貨物列車が相次いで脱線し、地元知事が「爆発物がさく裂した」と訴えた。戦勝記念日に向け、政権は緊張の高まりを強調している。
政権与党「統一ロシア」の下院議員は国営ロシア通信に対し、首都キーウ(キエフ)のウクライナ大統領府を攻撃すべきだと呼び掛けた。