北海道・知床半島沖で死者・行方不明者26人を出した観光船「KAZU 1(カズワン)」の沈没事故から1年となる23日、地元オホーツク管内斜里町で追悼式が営まれた。参列者は犠牲者の冥福と行方不明者の早期発見を祈り、「決して忘れない」と安全への誓いを新たにした。
式には乗客家族約80人や町関係者のほか、斉藤鉄夫国土交通相や海上保安庁の石井昌平長官ら計133人が出席。犠牲者に黙とうをささげた後、家族らが献花した。
主催者である町を代表し、あいさつした馬場隆町長は、遺族から寄せられた「家族の死は無駄ではない。未来の多くの命を守る礎になったと思いたい」という声を紹介。「事故を教訓として、安心して訪れてもらえる知床であるために行動し続けることが私たちの使命。(事故を)決して忘れない」と力を込めた。
斉藤国交相は「監査や検査を行いながら事故を防げなかったことを、重く真摯(しんし)に受け止めている」と述べた上で、「このような痛ましい事故を二度と起こさないという強い決意の下、再発防止に取り組むことを誓う」と強調した。
追悼式の後には、同じ会場で「知床観光の安全を誓う集い」が開かれた。カズワンの運航会社も所属していた「知床小型観光船協議会」の神尾昇勝会長は「本来感動を与える仕事がたくさんの方につらい思いをさせたことは、取り返しのつかない大きな過ちで、あってはならない」と述べ、「永続的に安心安全な知床を目指す」と誓った。
追悼式には運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(59)は招かれず、会場に姿はなかった。