外国人技能実習制度などの見直しを進めてきた政府の有識者会議(座長・田中明彦国際協力機構理事長)は10日の会合で、同制度の廃止と新制度の創設を求める中間報告のたたき台をまとめた。新制度では労働力確保に力点を置き、中長期的な就労を視野にスキルアップの仕組みを整備するよう明記した。
技能実習制度は1993年に導入された。母国で学べない技能や知識を日本で身に付け、帰国後に母国の経済発展を担ってもらう「国際貢献」を目的に掲げる。
ただ、実態は地方や中小企業で労働力不足をカバーする手段として利用されてきた面が強い。賃金未払いや長時間労働などの人権侵害が問題化。過酷な労働環境に耐えられず実習生が失踪するケースも相次ぎ、有識者会議は昨年12月から制度の見直しを議論してきた。
たたき台は、現行制度について「目的と実態の乖離(かいり)がある」と指摘。「現行制度を廃止し、人材確保と育成を目的とする新制度の創設を検討すべきだ」と提起した。
新制度では、外国人に中長期的に働いてもらえるよう、日本語力や技能を育成・評価する仕組みづくりを検討。一定の専門性を要する在留資格「特定技能」へ円滑に移行できるようにする。
実習生の転籍制限は、緩和する方向で検討する。実習生を仲介したり実習先の監督を担ったりする監理団体は要件を厳格化し、悪質な団体は排除する。
有識者会議は今後、制度の詳細や法改正の必要性などの検討を進める。今月中に中間報告、秋ごろに最終報告を取りまとめる見通しだ。
松野博一官房長官は10日の記者会見で「実りある議論を期待する」と強調。立憲民主党幹部は「非人道的な制度をこれまで放置したのはなぜか、どう解消するのか確認したい」と語った。