「179市町村の網目からこぼれる命がないように。救える命、守るべき暮らしを支えるため、広大な北海道だから『できる』施策を地域と共につくり、実践していく。これが地方自治の神髄だと思う」
政策(公約)のキャッチフレーズに掲げた「誰ひとり置いてきぼりにしない あたたかい道政」への思いを、こう語る。
東京都板橋区職員として14年間、福祉事務所に勤務。その後、本道に移住し、札幌を中心に社会福祉士として困窮者支援に取り組んだ。政治家を志したきっかけは自民党が下野した2009年の「政権交代」だったという。「教育の無償化も動いた。政治が変わると、こんなに変わるのか…。『福祉は政治だ』と思った」
国政選挙には通算4度挑戦。選挙区は故町村信孝衆院議員の地盤で、「保守王国」の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)。毎回、自民候補とデッドヒートを演じ、17年には比例復活で初当選。衆院議員を1期務めた経験がある。
4者会議(立憲民主党道連など)から要請を受けた、今回の知事選へのくら替えは正直、迷った。背中を押したのが、亡くなる直前に横路孝弘元衆院議長からもらった1本の電話。「早く全道を回って見てきて。大変な所がいっぱいある。頑張らないと駄目だ」。告示まで6週間余りに迫った2月4日に出馬を表明した。
出馬決断から超短期決戦の選挙戦。地域公共交通の再構築を目指す「北海道交通確保条例」、重要課題の決定に道民の意思を直接反映する常設型の「道民投票条例」―。3本柱を掲げた政策を熱く訴える。「市町村と一緒に4年間で必ず実績を出していきたい」
全国唯一の与野党対決型の知事選。現職との争点については「人への投資、地方重視」を挙げる。「一部の人だけでなく、全ての道民に還元していく。それが政治の役割ではないか」と道政刷新を訴える。
23日の告示以降、「横路さんからもらったバッジ」を胸に道内遊説を加速させている。「地域、暮らし、働きが維持できる仕組みづくりを市町村任せにしない。主体性のある道政をつくっていきたい」と強調。「広い北海道を回るには、時間はありません」―。「一期一会の戦い」が続く。