「苫小牧のことを知り、距離が縮まった」―。2022年12月に苫小牧市が初めて企画した「氷都とまこまい体感プログラム」で、小学生の保護者が満足そうに語った。東京や大阪などの児童4人が参加し、苫小牧の伝統的スポーツ・アイスホッケー(IH)を通して、市内の児童とも交流を深めた。
同事業は子どもたちに貴重な機会を提供し、父母らに将来的な移住を促す狙いがある。18年に道が主催で実施した際、参加4組のうち2組が移住を決めた実績もある。市政策推進課は「IH関係者の協力を頂き、苫小牧の魅力を発信できた」と手応えをつかむ。
市は人口減対策で移住促進に力を入れ、第2期総合戦略(20~24年度)で受け入れ体制充実を掲げている。市ホームページで情報を積極的に発信し、商業施設や医療施設を巡る体験プログラム「苫小牧オーダーメイド移住ガイド」を展開。同ガイドの参加も、20年度はわずか1件だったが、21年度は13件、22年度(10日時点)は10件と着実に成果を上げている。
ただ、人口減は止まらない。住民基本台帳に基づく市の22年末の総人口は16万8299人。前年と比べて1229人も減った。13年末の17万4469人をピークに、9年連続で減少。死亡数が出生数を上回る自然減が続いている。22年の出生数は959人で1953年以降、初めて1000人を下回った。
市は同戦略で人口が40年に15万人、60年に13万人を維持する目標を立てている。同課は「人口減少対策は長期的に行う必要がある。総合戦略の目標を達成できるよう、さまざまな施策を行いたい」と危機感を持って臨んでいる。
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道内では札幌市への「一極集中」が止まらない。地方都市は人口が減り続けながら、札幌市は転入超過が続いており、人口195万8226人(2月1日時点)を抱える。だが、その札幌市も21年から2年連続人口減。国立社会保障・人口問題研究所は、道内の人口が40年に約428万人、60年に約320万人と推計する。
人口減少が続くと経済活動が停滞し、税収減による公共サービスの低下など、地域を支える機能が危機的な状況に陥る。道は第2期創生総合戦略(20~24年度)で、市町村との連携強化や札幌市への過度な人口集中の緩和などを基本方針とし、持続可能な地域づくりを目指す。
苫小牧商工会議所元会頭の藤田博章さん(82)は「千歳市に半導体工場の誘致が決まるなど明るい話題もあるが、企業はコロナ禍などでどこも大変な状況」と指摘。人口減対策には若者の働く場が大事との考えから「苫小牧は港や空港があり、恵まれた地域。企業誘致を続け、観光や雇用の場をさらにつくり、道内全体で発展を目指す必要がある」と訴える。