ロシアのプーチン大統領は21日、内政・外交の基本方針を示す「年次教書演説」を行い、米国との核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行停止を発表した。最近、査察を拒否し、義務の不履行を米国に非難されていた。ウクライナ侵攻を続ける中、核兵器の脅威を一段と高めた格好だ。
侵攻については「戦争を始めたのは西側諸国であり、止めようとしている」と正当化。また「直面する課題を着実に解決していく」と述べ、長期戦に決意を示した。
24日に開始1年を迎える侵攻の現状認識を説明。ウクライナへの西側諸国の主力戦車など兵器支援が本格化する中、自国民に「戦時体制」への協力と「祖国防衛」のための団結を求めた。
プーチン氏は、侵攻を「国民の大多数が支持している」と主張。地上戦でロシア軍が敗北することはあり得ないと強調した。また、一方的に「併合」したウクライナ東・南部の占領地に「長期的な平和を回復する」と述べ、返還に応じない意向を確認した。
日本を含む西側諸国の経済制裁に関しては、奏功していないという立場を表明した。
侵攻を巡っては、バイデン米大統領が20日、ウクライナを電撃訪問し、21日夕(日本時間22日未明)には侵攻1年を控えてポーランドで演説。プーチン氏は年次教書演説に臨むに当たり、こうした動きも念頭に置いたもようだ。
年次教書演説はウクライナ侵攻開始後初めて。2021年4月に行われた前回から2年弱ぶりとなった。当初昨年3月で調整されたが、侵攻に伴い延期していた。
来年3月に内政の最重要行事である大統領選を控え、国民に西側諸国からの「脅威」を訴え、政権への支持を高める狙いもあるとみられる。プーチン氏は態度を表明していないが、20年の憲法改正でこれまでの任期がリセットされ、再出馬は可能。今回、選挙は戦時下でも予定通り実施されると明言した。
22日には、上下両院本会議が開かれ、プーチン氏が年次教書演説で提案した法律がスピード可決・承認される見通し。モスクワの競技場では「コンサート」と銘打った官製集会も予定されている。国営テレビが生中継する中、プーチン氏自ら登壇するとみられ、ウクライナ侵攻への「国民の支持」を演出することになりそうだ。