昨年2月の北京冬季五輪で初の準々決勝進出を果たしたアイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」。長年、代表を支えた主力が引退し、新しいチームで2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指している。その中で飛躍を期待される一人が下向雛(18)。釧路市から米国の高校に留学し、腕を磨いている。
▽強豪校でプレー
2021年8月に渡米し、昨夏からは米ミネソタ州のシャタック・セントメリーズ高に在籍している。同校は米国でも有名なアイスホッケーの強豪で、校内に二つのリンク、男子6チーム、女子は3チームがあるという。
下向はトライアウトを受け、女子最上位のチームに入った。18歳以下米国代表の選手が3人所属し、北京五輪の女子で金メダルを獲得したメンバーのコーチが指導。恵まれた環境でプレーする。
米国での指導で印象的なのは、試合中のポジションの取り方だという。「これは駄目」と否定されるのではなく、「ここにいたら、これができる、こっちも行ける、みたいに何通りも教えてくれる」。より実戦的に幅を広げていく指導が、自分には合っていると感じている。
当初は、このチームで通用するかどうか不安だったが、今では「第3ピリオドまで走り続ける体力」は他の選手に負けない自信が育ち、試合では得点も挙げている。
▽日米の選手層の違い
下向の世代は、日本アイスホッケー連盟の強化方針で中学時代から海外遠征を行って経験を積み、20年のユース五輪で日本を優勝に導いた。米国で体格の大きい選手たちと戦うことに気後れはしないが、選手層の厚さには圧倒されている。「日本代表チームは強いかもしれないが、米国代表は、帰った先のチームも強い」
日本の女子は中学生になると、大人と一緒にクラブチームでプレーするしかないのが現状。そこで試合に出られずに挫折してしまう若手も多い。米国では、トップチームのトライアウトに落ちてもプレーできる下部のチームが充実しており、競技を続けやすい環境が整っている。
他にも印象的なのは「みんなが仲良くいい雰囲気で、『絶対に勝つ』という目標を持って試合に入っている」ところ。日本に比べて先輩後輩の上下関係がなく、大事な場面では一丸となって見せる勝利への執念に、選手層だけにとどまらない米国の強さを感じている。
▽目指す選手像
次の五輪の目標は「メダルを取ること」と意気込む下向。今後は現地の強豪大学に進学して競技を続ける考えで、「みんなが苦しいときに点数を入れたり、走って行けたり、チームの中で助けてあげられる選手になりたい」と理想の選手像を思い描いている。