―2023年を振り返って。
「日本で新型コロナ感染者が初めて確認されてから3年。当社も感染拡大の影響を大きく受けたが、それでも昨年夏ごろから少し光が見えてきた感じだ。不採算の飲食店を閉じ、残した店の売り上げは回復傾向にある。しかし、外食業界全体を見れば、悪化の度合いが増している。当社としても事業改革に取り組み、外食事業に加えて食品製造の事業にも新たな軸足を置きつつある」
―食品製造事業にどう取り組んでいるか。
「後志管内黒松内町で運営するチーズやハムなどの食品加工センター『トワ・ヴェール』は、エネルギーや原材料高騰の影響を受けつつも、比較的順調だ。特にクリームチーズは高く評価され、東京の高級スーパーにも並ぶようになっている。とはいえ、道内には多くのチーズ工房があり、さらに選ばれる商品にしていきたい。今年は新商品の開発やラインナップの見直しに加え、生産場所を拡充することも考えている。昨年8月からは、農地を借りる形で農業にも参入し、カシスオレンジ栽培を始めた。菓子の原料やジャムとして納入し、東京のスーパーなどで販売された。取引を増やしたいとの声もあり、良いスタートを切れた」
―飲食経営を取り巻く現状について。
「以前はファストフード事業が苦しかったが、現在は順調。テークアウト需要も高まり、コロナ禍前より10%ほど売り上げが伸びている。ただ、コスト上昇によるメニュー値上げの影響が出るのはこれからで、不透明な面もある。アルコールを提供する店の経営も厳しい。飲食業界は原材料費の高騰、エネルギーコストの増加、外で酒を飲む機会の減少など生活スタイルの変化、人材難と「四重苦」の状況にある。飲食業の場合、原価率は30%が目安と言われてきたが、現在は40%超えの業態もある。水道光熱費も100万円単位で上がっている。これでは投資を回収できず、ビジネススタイルを変える必要が出てきている」
―今年の展望は。
「昨年12月27日、黒松内町の乳牛飼養牧場『TOMONIゆめ牧舎』の株式を取得した。2月から子会社として実際に運営していくことになる。酪農業は飼料高騰や牛乳消費量の減少で厳しい状況だが、だからといって無くすわけにはいかない事業だ。当面は事業を安定させることからのスタートとなるが、勝機はあるとみている。食品加工、農業、酪農を連携させ、食の生産・製造事業を強化していく。飲食事業では、自社ブランド『かつてん』などで海外進出の構想もある。海外に進出する際は、日本のものをそのまま持って行っても通用しない。現地で受け入れられる形態の検討を重ねている」
(終わり)
メモ 1978年創業。苫小牧市に本社を置く上場企業。「ミスタードーナツ」「モスバーガー」などフランチャイズ加盟店を主力に、道内外で飲食店を展開している。