12 ホテルニュー王子 小林(こばやし) 健司(けんじ) 社長 訪日客の回復期待 利便性、自然の豊かさ武器に誘客

  • 企業トップに聞く2023, 特集
  • 2023年1月25日

  ―2022年を振り返って。

   「コロナ禍が続いたものの、ほんの少し光が差し込んだ一年だったと思う。当社の主力はホテル事業と新千歳空港発着路線の機内食事業であるが、昨年のホテルの売り上げは21年比で60%増、機内食も20%増と回復した。宿泊ではビジネス客に加え、スポーツの団体利用も戻って来ている。道民割や全国旅行支援などの影響も大きく、宿泊者のほとんどが何らかの支援プランを利用していた印象だ。ただ、コロナ流行前の19年と比較すれば、やはり全体的に厳しい状況にある。機内食事業については、昨年10月の水際対策緩和で2年半ぶりに新千歳空港の国際線が再開したものの、需要は思ったほど戻っていない。コロナ第8波の影響で忘年会や新年会が軒並みキャンセルとなるなど、宴会部門も引き続き厳しかった」

   ―ホテル業界の現状と課題は。

   「感染対策と社会経済活動を両立させるウィズコロナへの移行で、客は戻りつつあるが、体力の限界を迎えて廃館するホテルや旅館が相次いでいる。さらにコロナ禍の間に多くの社員が退職し、当社も含めた宿泊業界全体が人手不足に陥っている。業界を託す次世代の人材をどう確保するかが緊急の課題で、脆弱(ぜいじゃく)と言われるサービス業界の雇用環境の向上が必要となってくる。世界に誇れる日本の『おもてなし』を守るためにも対応が急がれる」

   ―今年の展望は。

   「まずは何より、新千歳空港の国際線復活による外国人観光客の増加に期待している。機内食も現在は1社への提供にとどまるが、コロナ禍前の13社を超える取引先の確保を目指していく。また、仕事と休暇を融合させたワーケーションが注目を集める中、苫小牧ならではの交通の利便性と自然の豊かさを武器に、宿泊客の誘致を進めたい。昨年のホテル事業は個人利用を中心に回復しており、今年はさらにコロナ禍前の水準に戻ることを期待している。開催が難しかった大型のイベントも、感染状況を見ながら復活させていきたい。4年前が最後になっている銘酒会など、市民の方々に喜んでもらえる企画を立てるつもりだ」

   ―中長期的な戦略は。

   「ホテル事業、機内食事業共に、将来世代に負担を残さないポストコロナ時代の体制確立を目指す。これからのサービス業は『大量受注と大量消費』から、『個と質』を提供する時代になると考えており、当社としても対応していきたい。また、王子グループ全体で進めるSDGs(持続可能な開発目標)も継続的に取り組んでいく。その上で、より良い環境と健康を重視した職場をつくり、社員が希望を持てる会社にしていきたい」

  メモ

   苫小牧市表町で運営する「グランドホテルニュー王子」は1999年5月に開業。207室の客室を持つ大型ホテル。従業員数は正規、パートなどを合わせて335人(今月10日現在)。

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