【ブラジリア時事】ブラジルの首都ブラジリアにある連邦議会や大統領府、最高裁に8日、先の大統領選の結果に異議を唱えるボルソナロ前大統領の支持者多数が侵入し、破壊行為を働いた。1日に就任したばかりのルラ大統領は治安権限を地元自治体から連邦政府に移す「連邦介入令」を出し、事態収拾を図っている。地元メディアによると、議会一帯に集結した支持者は少なくとも4000人に上った。
ルラ氏は視察先のサンパウロ州から緊急の国民向けメッセージを出し、ボルソナロ氏支持者らの行動を「無責任で反民主主義的、破壊的なファシストの行為」と非難。「前代未聞の出来事であり、参加者は罰せられなければならない。破壊者たちへの資金提供者が誰なのかも調べる」と述べ、参加者やボルソナロ氏の責任を追及する構えを見せた。
一方、米国に滞在中のボルソナロ氏はツイッターで「法にのっとった平和的なデモは民主主義の一部だが、略奪や公共施設への侵入は法を逸脱している」と支持者に呼び掛け。その上で「現在のブラジルの長による私への根拠のない非難は受け入れられない」とルラ氏に反発した。
治安当局は大統領府や議会に侵入した支持者らを排除し、中央省庁が集まる一帯の道路を封鎖。地元警察によると、少なくとも300人が逮捕された。サッカーのブラジル代表のユニホームなどに身を包んだボルソナロ氏の支持者らは深夜までに解散した。
右派のボルソナロ氏は昨年10月30日の大統領選決選投票で、得票率1・8ポイント差で左派のルラ氏に惜敗。ボルソナロ氏の支持者は選挙結果を受け入れず、各地の軍基地前で断続的にデモを行い、介入して選挙結果を覆すよう軍に求めていた。ボルソナロ氏自身も敗北を認めていないが、任期終了間際に米国へ出国した。
選挙の敗者による結果受け入れを巡っては、2年前の2021年1月、米大統領選で敗北したトランプ前大統領の支持者が首都ワシントンの連邦議会を襲撃する事件が起き、世界に衝撃を与えた。トランプ氏とボルソナロ氏は「盟友」関係にあることでも知られる。
中南米4カ国と米国を歴訪中の林芳正外相は8日にブラジリア入り。9日にビエイラ外相と会談を予定している。