今年は3年ぶりに、新型コロナウイルス感染防止の行動制限のない夏や秋を過ごすことができた。道や苫小牧市は旅行需要の喚起や地域経済活性化のため、飲食店などで使えるクーポン券付きの「どうみん割」や「とまとま割」を展開。10月からは全国旅行支援も始まり、苦境を強いられてきた宿泊業界からは「まだ感染拡大状況に左右はされるが、明るい見通しも出てきた」と歓迎の声が上がる。
苫小牧ホテル旅館組合の佐藤聰組合長(57)は「コロナ禍に入り、非常に厳しい状態が続いていた。旅行支援は稼働率の向上にもつながり、ありがたい」と胸をなで下ろす。組合で各施設の稼働率は公表していないが、「今年はコロナ前の7割程度には戻っている印象」と語る。
自身が経営する「ホテル杉田」(市表町)では、市内の会社員が単身で数日宿泊したり、近隣に住む女性たちが食べ飲み歩きに使用したりと、「お得」に泊まれることでコロナ前にはなかった利用の仕方が目立ったという。11月には東南アジアからの個人旅行客2組も宿泊した。外国人の入国が制限されてから温泉の入り方を記した多言語表記を外していたが、「久しぶりに(看板を)戻したな、とうれしさがあった」と佐藤組合長は振り返る。
今年は一部規模を縮小したものの、「とまこまい港まつり」が3年ぶりに開催された。見送り傾向にあった各団体の対面式での総会や地域イベントも復活し、街に風物詩が戻ってきた。
だが現在も、第8波の真っただ中にあり、警戒を緩めるわけにはいかない。厚生労働省は、新型コロナを季節性のインフルエンザと同等の「5類」へ引き下げる検討を進めている。感染症対策と、地域経済活動の両立を願っている。
(高野玲央奈)