政府・与党は12日、防衛費増額のための税財源について、法人税で必要額の7割程度を確保する検討に入った。たばこ税増税のほか東日本大震災の復興に使われている「復興特別所得税」の活用も想定。2024年度から段階的な増税を実施し、27年度までに1兆円強の税収増を目指す。予定を1日延期し、16日に決定する23年度与党税制改正大綱に盛り込む。
財源1兆円強の内訳は現時点で、基幹税である法人税7000億~8000億円、たばこ税2000億~3000億円。これに復興特別所得税の4割に相当する2000億円程度を充てる案が浮上。富裕層に負担を求める構想も取り沙汰される。
財源確保に向け、法人税は本来の税額に一定の税率を上乗せする「付加税」を検討。原材料価格の高騰で先行きが不透明な中小企業に対しては、負担軽減措置を講じることも議論する。たばこ税は、紙巻きより税率が低い加熱式の増税を視野に入れている。
自民、公明両党の税制調査会は12日以降、それぞれ連日会合を開き、防衛財源の年内決着に向けた調整を急ぐ。ただ、両党内では増税への慎重論が根強いほか、経済界も企業に過度な負担が及ぶことに反対している。たばこ業界からも市場が成長している加熱式を狙い撃ちした増税に不満の声が出ている。
政府は23~27年度の防衛力整備費について、現行の中期防衛力整備計画(19~23年度、約兆円)の1・5倍を超える約43兆円に増やす方針。岸田文雄首相は新たな防衛費の内容、予算、財源を一体で検討し、月内に決定する意向だが、具体的な内容が明らかになる前に増税の議論が先行し、与野党の一部からも批判の声が聞かれる。