岸田文雄首相は8日、防衛費増額の財源を巡り、2027年度以降、増税によって1兆円強を確保するよう与党に検討を指示した。防衛力を抜本的に強化するには国民負担が避けられないと判断した。所得税は家計の負担を考慮し、増税を見送る考えを表明。今後、税収の大きい法人税を軸に与党で詳細を詰め、年内の決定を目指す。
増税の開始時期を巡り、首相は27年度に向け、複数年にわたり税率を段階的に引き上げることを検討するとした。来年度の増税開始は否定した。
政府は27年度からの本格実施を想定。段階的な引き上げによって税負担を緩和する狙いがあるとみられる。
首相は官邸で開かれた政府与党政策懇談会で「防衛力は将来にわたり維持していく必要があり、安定的にしっかり支える財源措置が不可欠だ」と述べ、増税への理解を求めた。
政府は23~27年度の防衛力整備費について、現行の中期防衛力整備計画(19~23年度、約27兆円)の1・5倍を超える約43兆円に増やす方針。首相は関連経費と合わせて防衛費を27年度に国内総生産(GDP)比2%に達するよう指示している。
27年度以降の追加財源について、首相は「毎年度4兆円」が必要になるとし、このうち3兆円は、歳出改革の徹底、特別会計などの決算剰余金、税外収入の活用で最大限賄うと説明した。残りについて「国民の税で協力をお願いしなければならない」と語った。
首相指示を受け、自民、公明両党は税制調査会で議論を本格化させる。ただ、自民党には増税への慎重論が根強く、対象税目や時期、税率を巡る議論は難航も予想される。