2 多彩な魚種 魅力高める リピーター増え手応え

  • 特集, 規制から開放へ 釣り人集う防波堤
  • 2022年12月6日
夏は良型のサバがたくさん釣れた一本防波堤。多点掛けに歓声が上がる

  「釣り人が来るか不安だった。けれどゴールデンウイークを過ぎて認知度が上がると手応えを感じた。リピーターが増えたからね」。東港・一本防波堤の運営主体、苫小牧港釣り文化振興協会の明村享会長は入り込み、釣果ともに初年度は上々と話し表情を緩めた。

   防波堤を利用した有料釣り施設は道内初。しかも同協会は施設運営の受け皿として地元の釣り愛好者を中心に設立した法人。日本釣振興会北海道地区支部が支援するものの、協会自体は実績もノウハウもない。「安全」と「絶対無事故」を合言葉に4月23日、手探りで運営を開始した。

   施設の開放日は土、日曜と祝日。朝から夕方までの1日入場者数の最多は、開業当初の4月こそ25人だったが5月は45人、6月は98人と倍々に増加。7月は101人、8月103人、9月109人、シーズン終了の10月は94人。場内は事故防止のため80組を上限にしており、6月以降は順調に経過した。入場総数は目標の2900人に対し2838人。「書き入れ時の9月の連休に台風で5日も閉鎖した。これがなければ3000人以上は確実だった」と明村会長は残念がった。

   釣果も目を見張った。対象魚が限られる春こそ中型カレイ、アブラコ(アイナメ)を中心に1日当たり全体でも1桁から20匹台だったが、釣魚の種類が増える6月は大型も上がり、熱心な釣りファンが多いサクラマスやマツカワのほか1メートル超のカスベも現れ、釣り場を盛り上げた。

   7月に入って中小のサバが釣れだすと1人で3桁の大漁者も続出。若者に人気の釣りスタイル「ショアジギング」の対象となるフクラギ、カンパチなどの青物も岸寄りし、多様な釣り方を楽しめる釣りパラダイスの様相を呈した。

   この時期は初心者や家族連れの姿も目立った。8月に「わが家の夏休みの家族イベント」と称して初来場した札幌市の中井早苗さん(42)は「釣りはあまりしたことがない」と言いながら、小学生2人を含む家族4人で中型のサバを30匹以上釣り上げた。「夏休みの思い出づくりは大成功」と喜び、せがむ子どもに再訪を約束していた。

   秋にかけては70センチを超えるハマチ、愛好者期待の大型のカジカ、アブラコが上がった。釣り場の可能性と魅力を一気に高めた。

   穏やかな日、鏡のように空や対岸を映す海で、大型魚に追われた小魚の群れが逃げ惑って水面を波立たせ、上空にその小魚を狙うカモメが群らがって辺りの空気を変えることがある。「たくさんの釣り人に見せたい瞬間。まさに雄大な自然のドラマです」と明村会長。大型魚をルアーで狙う釣り人たちが心躍らせる光景だ。釣りの醍醐味(だいごみ)を味わい、非日常を楽しみ、潮風と香りの思い出を刻む。体験が再訪の動機になる。

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