「シャワー室でわかる治安の良しあし」

  • 内山安雄の取材ノート, 特集
  • 2022年11月25日

 コロナ禍の直前、数カ月ぶりに日本に戻って、所属するテニスクラブを新しいところに変えてみた。

 ゲームを楽しんだ後、クラブハウスのシャワールームに向かう。使うブースを適当に選んでその前に立つなり、びっくり仰天する。各ブースのドアの下が60センチほども空いているのだ。しゃがんで隙間からのぞきこめば、脱衣スペースが、さらにその奥にシャワー室に通じるすりガラスのドアが見えている。

 こんなシャワールーム、直前まで長期周遊していたアジアの国々ではまずありえない。なぜか?

 この構造だと、ドアの下部にある隙間から、いとも簡単に脱衣スペースに侵入できるではないか。つまり脱衣スペースにおいてある貴重品を、「私がシャワーを浴びている最中に、どうぞ盗んでください」といっているようなもの。皆さん、「本当なのか?」とお思いだろう。

 タイの海水浴場で公共の有料シャワールームを使ったおりのこと。

 脱衣スペースのドアの下方に、たまたまなのか、やはり人間が横になればぎりぎり出入りできそうな隙間がある。これでは盗難にあって当然なので、貴重品だけを防水バッグに詰めて、シャワーを浴びている間も手元から離さないようにする。これってアジアではごく常識的なことなのだ。

 シャワーを浴びて、すりガラスの向こうの脱衣スペースに戻ったところが――。

 「ない! ない! なんてこった!」

 あぜんぼうぜん。まさかと思っていたが、衣類が盗まれているではないか。

 犯人のお情けなのか、はたまた盗り忘れたのか、さすがに汚いから盗らなかったのか、なぜかブリーフだけは残っている。

 やむなくブリーフ1枚に小さなバスタオルをはおった珍妙な格好でタクシーを拾うしかなかった。かつて死海で海水浴中に似たような目にあっているというのに不注意といおうかお間抜けといおうか……。

 海外でこんな目にあったばかりだったので、日本のテニスクラブのシャワールームを見るなり、その無防備さに目を剝(む)いたというわけだ。シャワーを浴びるたびに気が気でなく、慣れるのに1カ月以上もかかってしまった。

 こういったシャワールームの構造を見ただけで、日本はまだまだ安全な国なんだな、としみじみと思うのだ。

 ★メモ 厚真町生まれ。苫小牧工業高等専門学校、慶應義塾大学卒。小説、随筆などで活躍中。「樹海旅団」など著書多数。「ナンミン・ロード」は映画化、「トウキョウ・バグ」は大藪春彦賞の最終候補。浅野温子主演の舞台「悪戦」では原作を書き、苫高専時代の同期生で脚本家・演出家の水谷龍二とコラボした。

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