一冊の本

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2022年11月4日

 日が暮れるのが早い。秋の夜長。本を読む時間が増えた。ジャーナリストの本田靖春さんが書いた文庫版のためのあとがきが心に響いた。

 オート三輪が街を走っていた時代だった。本田さんはその朝、交通事故を目撃する。向かい側の酒屋の店先から飛び出した幼児が、オート三輪にはねられて即死した。新聞記者になって日が浅く、いわゆる「サツ回り」をしていた。担当地域外だったが、成り行きを短い原稿にまとめて社に電話で送った。

 全紙が夕刊で扱ったが、本田さんの記事を除く全てに共通の間違いがあった。幼児をはねたのが小型トラックにすり替わっていた。地元警察の誤った発表をうのみにしたからだ。「彼らが現場を踏んで独自に取材していれば、こういうことになるはずがない」と書く。官の側から得た情報を送り出すだけでなく、より広い視野でトータルに捉えることの重要性を訴える。

 30代後半で新聞記者からフリーに転身。そして戦後ノンフィクションの最高傑作とされる、あの「誘拐」(ちくま文庫)が誕生する。年配の方なら記憶が鮮明であろう「吉展ちゃん誘拐事件」の全体像を、世相や社会の動向にも言及し書き込む。特に農家の五男に生まれ、貧しさから右足のあかぎれが悪化し、歩行障害が残った犯人の生い立ちには心が揺さぶられる。底辺の人たち、社会的弱者を見詰める本田さんの目は常に優しい。71歳で天国に旅立って、来月4日で18年の歳月が流れる。(広)

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