ロシア上院は4日、ウクライナ東・南部4州の「併合条約」の批准法案を審議する。可決後、プーチン大統領が署名して法が成立。既にサンクトペテルブルクの憲法裁判所による2日の「合憲」判断や、下院での3日の批准を済ませており、ロシア側の法的手続きがすべて完了する。国際社会の懸念は無視される格好となった。
親ロシア派がロシアによる併合に向けた「住民投票」実施を9月20日に発表して丸2週間。プーチン政権としては、あらかじめ計画したシナリオに沿ってスピード決定し、停戦交渉に応じないウクライナ側に圧力をかける狙いがあるとみられる。
一方、侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー政権は、プーチン氏による30日の併合宣言後も4州奪還に向けて反転攻勢を仕掛けている。侵攻開始から7カ月以上が過ぎたが、戦闘終結への道筋は見えていない。
今回の併合は、ロシア軍中央軍管区の副司令官が目標として4月に言及した東・南部の「完全支配」と重なるものだ。プーチン氏は後付けで4州が「歴史的領土」だと強調。防衛のため「あらゆる兵器を使う」と述べるなど、核使用の可能性を排除していない。
追加制裁に踏み切る米国などに対し、ロシアは最近、自国に都合の良い歴史認識を持ち出して批判を展開している。ラブロフ外相は3日、米国がウクライナ支援を通じてロシアの弱体化を図っていることについて、下院で「ナチス・ドイツによる(第2次大戦の)ソ連侵攻と同じだ」と主張した。