今年6月23日、トヨタ自動車北海道で主力品目だった自動変速機(AT=オートマチックトランスミッション)の「U340」が生産を終了した。1999年7月の生産開始以降、累計生産数は約1256万6000台と、同社の歴代最多を誇った製品。道内ものづくり企業最大手の地位を、不動のものに築く原動力となった製品の一つだ。シャットダウンの「節目」に従業員一同で感謝し、北條康夫社長も「とても感慨深い」と振り返る。
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92年10月に同社の部品製造がスタート。トヨタ本社の支援でアルミホイール、AT、トランスファーと当時「3本柱」の生産を順次始めた。それぞれの生産が充実期に入る中、新型AT「U340」はトヨタ北にとって、主体的に取り組んだ初の生産ラインとなった。排気量1500、1800ccエンジン用の小型仕様クラスATは、トヨタ北の確かな技術力で受注し、トヨタグループでは唯一の生産。従業員も創業当初はわずか63人(92年4月1日)だったが、「U340」のラインオフに伴い、99年8月に1000人を突破した。
看板車種「カローラ」をはじめ、若い世代向けのベーシックカー「セリカ」「bB」など、幅広い車種に続々と搭載が決まり、生産ラインの能力増強が相次いだ。2002年5月に第2ラインを、04年4月には「現状打破」の頭文字から名付けたBTHラインをそれぞれ稼働。ピーク時の08年には年間120万台以上を出荷した。
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そんな一時代を築いた生産品目の終了も、同社にとっては通過点にすぎない。06年9月に無段変速機(CVT)、12年10月にハイブリッド車向けトランスアクスル、18年5月にダイレクトシフトCVTと製造ラインを次々と稼働。一方、10年7月に生産品目第1号のアルミホイールを、今年6月にCVTのうち第1ラインの生産もそれぞれ終了。トヨタ車のモデルチェンジに対応しながら新たな挑戦を続け、主力製品は時代と共に移り変わる。
札幌ドーム18個分、103万ヘクタールの敷地にある第1~5工場は現在、AT、CVT、ハイブリッドトランスアクスル、トランスファーの生産ライン9本体制で活況を呈している。売上高は21年3月期(20年度)決算で過去最高の2037億円となり、従業員は現在、過去最高規模の3597人(8月1日現在)。08年秋のリーマンショック以降、景気後退や自然災害で減産を余儀なくされた時期もあり、おおむね3100~3400人台で推移していたが、今年4月以降は3500人超を堅持している。
自動車業界が脱炭素社会の実現、電動化へのシフトなど100年に1度の大変革期と言われる中、新型コロナウイルス感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻など、従来であれば想定外だった難題も相次ぐ昨今。急変する状況にも柔軟に対応しながら、日々の「カイゼン」で質にこだわり、地域にとってなくてはならない企業であり続ける。北條社長はしみじみとこう語る。「苫小牧を拠点にしたことは正しい判断だった」
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苫小牧市勇払の自動車部品製造業、トヨタ自動車北海道が9月6日に創業30周年を迎える。好調な自動車販売を背景に「快走」を続け、経済、雇用をはじめ地域に多大な波及効果を生み出してきた。第1部では同社のものづくりを中心に成長の歴史に迫る。