19日午後7時ごろ、薄暗くなった安平小学校のグラウンド。同校のPTAが主催する恒例の親子レクリエーションで、キャンプファイアが始まった。組み立てた木の段から火の粉が舞い、炎がバチバチと音を立てて燃え上がる。集まってきた児童たちが「うわー、すごい」と目を丸くしている姿に、これから過ごすひとときへの期待を感じた。
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安平小のPTAは毎年この時期、親子レクを学校で開催している。PTAの保護者によると、伝統的に続いている事業で「かつてはグラウンドにテントを立ててキャンプをしていたことがあったし、親連中は焼き肉をしていた」と振り返る。PTAの会費と廃品回収で集めた益金で、児童たちにお菓子や花火をプレゼントするなど、「大きな学校ではなかなかできないこと」(学校関係者)もしてきた。
しかし、新型コロナウイルスの影響から、昨年は夏のレクを冬に延期。キャンプファイアはここ数年、実施を見送っていた。今夏もコロナが再流行していたため、感染症対策として飲食はやめたが、体育館で「かたき」などのボールを使ったゲームや輪くぐりを行った。さらに「今年は最後だから」とキャンプファイアを復活させた。たき火に使用する木材は、地元の住民から解体中の建物の柱を譲ってもらったという。
当日は降雨や風の心配のない、絶好のキャンプファイア日和になった。中島勉校長は「朝、学校に来た時から楽しみにしていたようで、喜んでいました」と児童たちの様子を話す。
間もなく音楽が流れだし、子どもも、保護者も、教員も、みんなで火を囲んで輪をつくった。懐かしの「マイムマイム」の曲に合わせ、フォークダンスや花火を楽しんだ。歓声と笑顔が大人と子どもの垣根を越えて広がり、楽しい夏の一夜を満喫した。
児童会長の芦谷駿君(11)=6年=は、燃え上がる火を見詰めながら、母校が閉校することについて「やっぱり寂しい」と静かに思いを明かしてくれた。「でも、最後まで安平小にいられたから。最後の夏に小学校でいい思い出ができてよかった」と実感を込めた。
小さな学校の学びやで織り成される思い出。その一つ一つが、子どもたちの胸や地域に、確かに刻まれている。
(終わり)