白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で25日、第4回特別展示「CHIRI MASHIHO 知里真志保―アイヌ語研究にかけた熱意」が特別展示室で開幕した。幌別村(現登別市)出身の言語学者、民族学者、知里真志保(1909~61年)の人生と業績、関わりがあった人々を取り上げ、没後60年を経てもなお、現代に受け継がれる研究を振り返る。8月21日まで。
知里真志保は、古里の幌別をはじめ、道内、樺太各地で採集した語彙(ごい)を基に「分類アイヌ語辞典」や「地名アイヌ語小辞典」を編さん。渋沢栄一の孫で事業家の渋沢敬三、アイヌ語研究の第一人者金田一京助などと関わりを持ちながら、口承文芸や文化史に関わる論文を数多く残し、言語学、口承文芸、民族学、歴史学などの研究において、後世に大きな影響を与えた。
特別展示では、写真や日記、書簡、書籍などの史料約200点を展示。6章立てで誕生や東京での学生生活、そしてアイヌ語研究の基礎を築き、52歳で亡くなるまで続けた道内各地での調査と辞書編さんの足跡を紹介している。
このうち5章の「知里真志保を描くウタリ」では、アイヌ民族で初めて国会議員となった萱野茂(26~2005年)ら研究に関わりのあった人々との交流について紹介。6章の「AYNU ITAK(アイヌイタク)」では、知里真志保の研究をベースにアイヌ語を楽しく学べるクイズ、ゲームのコーナーを用意している。
国立アイヌ民族博物館は「展示を通して彼の研究の業績を振り返り、アイヌ語やアイヌ文化研究の今後を考える機会にしたい」としている。期間中は同館職員によるギャラリートークや5回の講演会、夏休み期間中の子ども向けイベントなどを予定している。
観覧料は大人300円、高校生200円、中学生以下無料。この他にウポポイ入場料が必要となる。入場はオンラインによる事前予約制で、詳しくはウポポイのホームページ(https://ainu-upopoy.jp/)に載せている。