氷都苫小牧で屈指の歴史と伝統を誇る苫小牧工業高校アイスホッケー部に4月、1年生8人が入部した。一時は試合に必要な6人にも満たないほど部員数が減少し、存続の危機に立たされていた。「伝統あるチームでプレーがしたい」と志高く同部の門をたたいた新入生を迎え入れ、部内は活気を帯びている。堀内駿主将(3年)は「まずは陸上トレーニングで体力をつけて、大会でしっかり結果を残したい」と意気込む。
苫小牧、札幌などの中学校で腕を磨いたFW6人、DF2人。小野崎優監督や上級生の手ほどきを受けながら、現在は陸上トレーニングで体力づくりに励んでいる。
CFの西村優空(苫小牧緑陵中出)は苫工でのプレーを熱望していた一人。高校卒業後の就職率の良さも決め手になった。「早く高校の練習環境に慣れて、少しでも上級生に近づきたい」。FWの島貫朔(苫小牧啓北中出)は「1年生から試合に出て活躍したかった。仲間を生かせるプレーヤーになりたい」と抱負を語った。
苫工アイスホッケー部の歴史は大正時代にまでさかのぼる。1924(大正13)年、教員として赴任した苫小牧の「スケートの父」故西田信一氏によって市内初のアイスホッケーチームとして創部。50~70年代に北海道大会11回、高校総体7回の優勝を誇った。
私立高が台頭した2000年代以降は優勝こそ遠ざかったが、多い年で30人を優に超える選手を抱え、各大会で奮闘。高橋聖二(29)、相木隼斗(23)といったアジアリーグのレッドイーグルス北海道(前王子イーグルス)で活躍する選手も輩出してきた。
陰りが見えたのは5年ほど前。全国的な競技人口減少で市内の中学生が道内外の強豪校に流出しだすと毎年部員は減り続け、昨年12月の道大会後にはわずか5人となった。今年1月の南北海道高校新人大会出場は辞退。新型コロナウイルスの影響で中止にはなったが、8月の全国選抜大会出場権は失った。
19年に赴任した小野崎監督は、苫小牧東高―早稲田大とアイスホッケー部に所属。高校時代は苫工と何度もしのぎを削った思い出があり、「こんなにも部員確保に苦労するとは思ってもいなかった」と吐露する。
新入生の大量入部にひと安心する一方、選手勧誘を行えない公立校の立場上「毎年戦々恐々としている。伝統校ですらそういう思いをしなければならないのは、悲しい現実」と地域の競技力衰退に肩を落とした。
苫工ブランド復活へ―。13人の少数精鋭で今季を戦う選手たちの鼻息は荒い。堀内主将は「昨年度は高校総体に出場できなかった。先輩たちの悔しさを晴らすためにも、2大会前の高校総体ベスト8越え、全国優勝を目指す」と誓った。
―苫工IH部部員数推移
年度 人数
2022 13
21 11
20 18
19 20
18 20
17 20
16 26
15 22
14 32
13 19