白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)を8日に視察した松野博一官房長官は、同空間にある伝統的コタンゾーンのポロチセ(大きなかやぶきの伝統家屋)でアイヌ民族の関係者や白老町の戸田安彦町長らと懇談し、伝統文化継承や発信、ウポポイの運営の在り方やまちづくりでの活用方法について意見を交わした。
松野官房長官は冒頭「岸田内閣は『聞く力』を掲げている。この場は皆さんからの忌憚(きたん)ないご意見を頂きたい」とあいさつ。
北海道アイヌ協会元理事長の加藤忠氏は国が民族を先住民族と位置付けたことや差別解消などをうたったアイヌ施策推進法成立に感謝しつつ「北海道の土地とアイヌの歴史について、公正で分かりやすい解説、発信を願う。これはウポポイの役割だ」と強調した。また、ウポポイが掲げる年間100万人の来場者目標について「1日当たり3000人の来場があるとなると、現在の道路環境では渋滞、混雑し、来場者に不便や危険な状況を強いてしまう。来場者に嫌な思いをさせたくない。あと1本の道路整備を」と強く訴えた。
白老町の戸田町長も道路整備の必要性を訴えたほか「道内各地域に(アイヌ文化を継承する)担い手を育成し、ウポポイを含めた道内各地域で(観光客の)周遊性を持たせるために、複数の自治体がウポポイとの連携を希望している。町として何か大きな連携ができたら」と述べた。
登別市の小笠原春一市長はウポポイ見学ツアーの一環で登別温泉の利用を訴えると共に「アイヌ文化の発信、発展にはウポポイを含め近隣のアイヌの方々による魅力の発信が不可欠。登別には魅力あふれる方々がいる。ウポポイを盛り上げる一助になるのでは」と話した。
ほかにはアイヌ民族出身の名誉館長を置く、スタッフのスキルアップのため国内外の先住民族の個人・団体を積極的に受け入れる、スタッフを研修留学させる、などの改革を要望する声があった。
松野官房長官は「多様性を大事にした社会をつくっていこうというのが内閣、政府の大きな目標。アイヌ文化には各地域に特性があることが改めて分かった。(道路などの)環境整備の問題には時間がかかるものだが、道との連携で検討させていただく。ウポポイの運営に関する意見も関係部署にしっかりと伝えていきたい」と述べた。