2 地域がつくるアイヌの独自性 明治から現在へ 衣服の変遷

  • 特集, 白老の衣服文化
  • 2022年4月23日
ユニフォームとなった衣服の変遷を伝える展示物

  国立アイヌ民族博物館では、アイヌ文化の地域性に注目した展覧会を定期的に企画することを計画しており、現在、第1回としてテーマ展示「地域からみたアイヌ文化展 白老の衣服文化」を開催しています。

   19世紀ごろまで、アイヌ民族は、北海道、樺太、千島、東北北部などに住んできました。現在多くのアイヌ民族は北海道に住んでいますが、北海道を離れて関東圏などの日本国内、そして海外にも居住しています。アイヌ文化が持つ独自性は、地域に根差した文化一つ一つがつくり出しています。地域によって異なる地形や自然環境などが、その地域の文化を育みます。同時に地域の文化は孤立することなく、地域を超えてその時々のさまざまな文化と結び付きながら変化を繰り返してきました。地域に住む人たちが文化を担い、創造し、受け継いできたことも忘れてはいけません。

   今展覧会では、北海道南西部に位置する白老で見られるアイヌの衣服が、19世紀後半ごろから現在へ至るまでの間、白老に住む人たちと共にどのように変遷してきたのか―について3部に分けて紹介しています。1部は、明治から昭和初期までの白老コタンでの「家系で受け継がれてきた衣服」。2部は、観光の拠点をポロトコタンへ移した昭和40年代ごろの「舞踊や博物館展示のために製作された衣服」。3部は、ポロトコタンで観光が本格化していく昭和50年代ごろから平成へ至る「衣装としてユニフォーム化していく衣服」と、現在の白老町で「文化伝承される衣服」を展示しています。

   白老のアイヌの衣服を通じ、「地域からみたアイヌ文化」を視覚的に感じる展覧会となっています。

  (文=国立アイヌ民族博物館研究主査・鈴木建治、写真=同研究員・赤田昌倫)

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   民族共生象徴空間(ウポポイ)・国立アイヌ民族博物館(白老町)のテーマ展「白老の衣服文化」は5月15日まで。観覧料はウポポイ入場料(大人1200円、高校生600円、中学生以下無料)に含まれる。月曜休館。

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