石倉を使った白老町の文化施設「蔵」に先日、ドラムの音が響いた。昭和期に活躍したバンド・オフコースの名曲をバックに迫力のスティックさばきを披露したのは、元メンバーの大間ジローさん。青春時代を思い出しつつ名ドラマーの演奏にしばし酔いしれた。
これはコンサートではない。4月に開校する熱中小学校江丹別・白老分校の体験授業。大間さんは音楽の魅力を伝える講師だ。集まったのは若者から高齢者まで幅広い年代の人々。誰もがわくわくした表情で、ライブ仕立ての授業を楽しんだ。
熱中小学校は、正式な学校ではない。”大人の学びの場”を掲げ、地元のNPO法人などが運営する社会教育プロジェクトだ。2015年に山形県高畠町で始まり、全国に拡大。現在、北海道から沖縄まで19地域に開設されている。先生は著名な起業家や冒険家、科学者など各分野のスペシャリスト。活動に共鳴した一流講師陣が手弁当で教壇に立つ。同分校は、白老町と旭川市江丹別町の団体が連携して営み、両地域で毎月1回、交互に教室を開く。授業のみならず、部活動も促したいという。
人生を豊かにする学習機会の提供にとどまらない。関係者はその先を見詰める。講師は招かれたまちの魅力を知り、持続的に地域活性化に関わる。生徒は学びを生かした事業を立ち上げ、新風を吹かせる―。そんな発展性に期待を寄せる。同分校は生徒を募集中で、問い合わせはしらおい創造空間「蔵」。(下)