編んだり、織ったりと、アイヌ民族の女性の手仕事でこの人にかなう者はそういないだろう。白老町の伝統工芸家・山崎シマ子さん(81)がアイヌ民族文化財団の今年度アイヌ文化賞に輝いた。誰もが納得の受賞と言っても過言ではない。同賞はアイヌ文化振興に尽力した人に贈られる。25年前に創設、これまでに30人が賞を受けた。白老町では山崎さんが4人目。過去の受賞者は既に鬼籍に入ったが、元気なうちは―と伝承の意欲を失わない。
白老で昔、コタンと呼ばれた地域で生まれた。木彫が得意だった父からは、アイヌのことは絶対にやるな―と言われ続けた。民族の血を引く者として体験した苦労を娘に味わわせたくない、そんな親心からではないかと山崎さんは想像する。だが、教えを守り切れなかった。45歳のとき、家計を支えるため旧アイヌ民族博物館に就職し、民具制作に関わった。実直に打ち込んだ。体に流れる血も意識するようになった。やがて誰にも負けない技術を身に付けた。
復元に妥協を許さない。樹皮衣の制作も適した木を探すところから始め、1着作るのに何年もかける。先祖の営みを丁寧に受け継ぎ、伝えたいとの思いからだ。だが、材料が手に入りにくい。ござ編み一つとっても必要なガマが確保できない。自然破壊を伴う開発行為が伝承を難しくさせた。日本の文化の多様性を維持するには自然素材の再生が欠かせない。山崎さんがかねて訴えていることだ。(下)