7 市社協地域福祉課長・千寺丸(せんじまる)洋(ひろし)さん(52)直接会って解決策探る、 「助けになりたい」の声も

  • 地域の力 超高齢社会を生きる, 特集
  • 2022年1月21日
地域の集まりに出向いて住民と交流する千寺丸さん

  「運転免許証を返納してから買い物に行くのが大変になった」「お金が無くて食べる物も無い」「年を取って家の前の雪かきができなくなった」

   苫小牧市社会福祉協議会の職員として、まちを見詰め続けて7年。連日のように、高齢者から助けを求める声が寄せられている。

   その一つ一つにじっくりと耳を傾け、解決策を探る。困り事を抱えている人の中には、ほんの数年前まで地域コミュニティーで中心的役割を担い、住民を支える側だった人も少なくない。社会の急激な変化に伴い、地域のありようも大きく変わろうとしているのを感じている。

   「既存の考え方にとらわれず、新たな地域づくりを進めるべきタイミングに来ている」。時代の転換期に生き、地域福祉に携わる1人として成すべきことを模索する毎日だ。

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   苫小牧市出身。市の公共施設を管理する第3セクターに就職後、2015年に市社会福祉協議会の職員となった。40代にして初めて福祉の仕事を経験することになったがとても新鮮で、どんどん夢中になっていった。

   社協では主に地域福祉を担当。19年度には市から、高齢者のニーズに沿った地域福祉の在り方を考え、担い手の育成などに取り組む「第1層生活支援コーディネーター」に任命された。

   まずは地域で今何が起こっているのかを知るため、町内会や老人クラブの会合、ふれあいサロンなどに頻繁に足を運んだ。すると、今まで把握できていなかった問題が次々と見えてきた。引きこもりの子どもと暮らす人やペットが増えすぎて世話をし切れなくなった人、自宅にたまったごみに囲まれて暮らす人…。深刻な状況の高齢者が、地域内に点在していることが分かった。

   一方で、「困っている人の助けなりたい」と力を貸してくれる人が、想像以上に多いことを知った。その中には町内会活動に熱心な人ばかりではなく、地域で”埋もれている”人もいた。「無理なく少しずつみんなで力を合わせれば、まちを支える大きな力になる」。そう考え、住民主体の支え合い事業に力を入れ始めた。

   1人暮らしの高齢者がペットの世話を心配し、自身の病気の治療を先送りにするケースが市内で頻発しており20年度、入院や短期入所の際に飼い犬、飼い猫を市民ボランティアが預かる事業に着手。全国的にも珍しい試みだが30人を超える市民がボランティアとして名乗りを上げてくれた。

   同年度には日本製紙北海道工場勇払診療所の閉鎖などで通院が不便になったという勇払地区の高齢者のために、市民ボランティアによる送迎サービスを試行。今年度はごみの分別や農園活動、庭の手入れなど活動を限定的な内容に特化した「だけボラ」事業も始めた。

   新型コロナウイルス流行下で町内会などの集まりに足を運ぶ機会は減ったが、社協へのSOSは止まない。高齢化の進展で、困り事を抱える人は今後さらに増える。それでも誰かの助けになりたいと思う人がいる限り、まちの未来はきっと明るいものになると確信している。

       (姉歯百合子)

         (終わり)

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