《7》 努力賞 「約 束」 和光中学校2年 石郷岡 陽緋さん

  • 特集, 苫小牧市中学生主張発表大会
  • 2022年1月20日

 今でもはっきりと覚えています。5年ほど前、小学校3年生の夏休みのことでした。僕は友達3人と一緒にプールに行きました。その時の出来事です。

 プールで遊び疲れた僕は、1人でサウナ室で休むことにしました。すると、僕の正面に座っていたおじさんが、「今、何年生?学校は楽しいかい?」と話しかけてくれて、そこから会話が続き、いろいろな話をしました。

 おじさんは、自分の過去のことを教えてくれました。小さい頃サッカーをやっていて、プロを目指していたこと。しかし、ある時を境にサッカーをやめたこと。そして、その理由は、交通事故で右脚を失い、義足になったからだということ。さらに、そのためにイジメを受けていたことも…。

 その頃の僕には、難しい言葉も多く、義足のことも知らなかったので、「ぎそく…って何?」と聞いてしまいました。するとおじさんは、嫌な顔ひとつせず、実際に義足を外して「これだよ」って見せてくれたのです。

 僕は、おじさんが足を取ってしまったことにビックリして、そして、怖くなって、泣きながらサウナ室を飛び出し、プールの係員さんに、「おじさんの足がとれちゃった!」と伝えました。すると係員さんは、急いでサウナ室に向かい、そのおじさんが義足だということを確認しました。そのあと、僕の名前を聞いてから、優しく語りかけてくれました。

 「はるひ君、世界中には、たくさんの人がいるよね。みんな同じ人だと思うかい?」

 聞かれた僕は、「いや、同じじゃないと思う」と答えました。すると、係員さんは、「そう。人はみんな違うんだ。みんな違ってみんないいとも言うし、違うからケンカだってするし、得意や不得意も、好き嫌いだってある。それは、人それぞれで、それを『個性』って言うんだ」

 僕は、その時はじめて「個性」という言葉に触れました。係員さんは続けます。

 「はるひ君は、耳が聞こえるよね。でも、聞こえない人だっている。はるひ君は目が見えるよね。でも見えない人だっている。肌が黒い人も白い人もいる。健康な人も、手足が不自由な人もいる。日本語を話す人もいて、英語を話す人もいる。世界中にはいろいろな個性を持っている人がいる。同じ人間だけど、違う人なんだ。でも、その個性が珍しいってことだけで、バカにして、傷つける。そんな悲しい人たちもいるんだよ。同じ人間なのに、足が違うだけで逃げられたら、その人はどう思う?」

 「悲しくなると思う」

 係員さんの問いに僕はそう答えました。

 その時、おじさんは泣いていました。僕も泣いていました。

 「おじさん、ごめんなさい」

 僕は思わず謝っていました。

 「大丈夫だよ。ビックリさせちゃったね」

 おじさんはそう答えてくれました。 

 係員さんも仕事に戻り、おじさんも帰ろうとした時、僕はおじさんに言いました。

 「おじさん。僕もサッカーやっているんだ。将来、プロになって、有名になって、個性の違いで悲しんでいる人たちに、元気をあげられるような人になる。その時は、試合を見に来てよ」

 「わかった。楽しみにしてるよ」

 おじさんは、ニコッと笑ってくれました。

 今、差別によって苦しむ人は数えられないほどいるだろう。それが「個性」だと認め合える社会にしなければならない。「個性」の違いに胸を張れる世の中にしなければならない。

 プロ選手になれるかはわからないけど、おじさんとのもう一つの約束は絶対に守りたい。

こんな記事も読まれています

    •          苫小牧民報創刊75周年記念講演             豊丘村制施行70周年記念講演 入場無料 三國清三シェフ 「70歳からの挑戦」   講師 三國 清三 氏 日時 6月7日(土) 令和7年 開演15時

    • 2025年7月22日
  • テストフリー広告

       苫小牧民報社創刊75周年記念講演会 入場無料  【講師】アルピニスト 野口 健氏  【演題】富士山から日本を変える  ~山から学んだ環境問題~  日時・会場・申込・問合せブロック  2025年(令和7年)8月9日(土)

    • 2025年7月18日PR
    テストフリー広告
  • テストフリー広告

       <!DOCTYPE html>  <html lang=”ja”>  <head>  <meta charset=”UTF-8″

    • 2025年7月18日PR
  • TEST
    • 2025年7月15日
  • TEST
    • 2025年6月26日
ニュースカレンダー

紙面ビューアー