「コーヒーとお菓子はいかが」
テーブルで談笑する高齢者たちに、心を込めて用意した茶菓子を振る舞う。自身も途中から世間話に加わり、小さなサロンに「憩いの場」という言葉がぴったりの光景が広がる。
苫小牧市住吉町の住宅街の一角にあるコミュニティーサロン「ハマ遊の友」はいつも和やかで、にぎやかだが団塊の世代が今年から後期高齢者となり今後、パートナーを失って孤独を感じる人も増えていくと危機感を持っている。「独居の高齢者の心のよりどころとなるようなサロンがもっと必要」。
本業は着付け師で、洋裁も手掛ける。ハマ遊の友は2012年に市内双葉町の空き家を利用し、手作り雑貨の販売や洋裁教室を始めたのが始まり。当初、コミュニティーサロンに衣替えする気は全くなかったが、友人や近隣住民らも集うようになると、次第にサロン化を希望する声が強まっていった。
以前、民生委員を務め、独居の高齢者が増えてきていることは認識していた。そんな人たちを対象にコンサートを企画してきたこともある。不安もあったが、地域のお年寄りを守りたい―と自身が代表となりサロンを始めることを決意。18年3月までは市の地域振興や福祉の助成金も利用して活動を重ねた。20年11月からは、有志5人でつくる市民団体「みらいづくりハマ遊の友」が運営。月に数回の朗読会や洋裁、習字教室、外部講師を迎えた勉強会などを開いている。
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活動は、全員参加型を重視。皆で何か一つの物事に取り組むことで周囲に自らが必要とされていることを感じ取ってほしいと思っている。当初は誰もが気軽に参加できる行事の企画に力を注いできたが、「今は参加者一人ひとりの話を、個別に聞いてあげなくては―という気持ちが強くなっている」。参加者の中にはパートナーの病気の進行や死別の悲しみを吐露する人も少なくない。必要なときには、葬儀場の手配も手助けする。
「寂しい気持ちが続いており、どうしたらいいのだろう」―。そんな告白を受けることもしばしば。自身も40代で夫を胆管がんで失った経験を持ち、気持ちが分かる。だから、静かにじっと向き合ってひたすら話を聴く。
最初はぼろぼろと涙を流していた相談者も、苦しみを打ち明けることで、表情が次第に明るくなり「元気をもらえた」と帰っていく。
決まった日時に皆が一斉に集まる町内会主催のふれあいサロンなどでは打ち明けにくい本音もある。少人数で一緒に悲しみを共有し、乗り越えていけるような場がもっと必要だと考える。日頃から交流のある市社会福祉協議会の職員らと、サロン参加者の家族構成の変化など見守りに当たって必要な情報を小まめに共有。「包括支援センターとの連携もより密にし、新しい風を吹かせたい」と語る。
末永く、サロンの運営を続けていくには、経済的な基盤の確立や市民理解も不可欠。補助金の仕組みが整うことと、地域の子どもたちに食事を提供する「子ども食堂」のように活動の趣旨に賛同し、協力してくれる仲間がもっと増えていくことを切に望んでいる。
(小玉凜)