「高齢者にスポットを当ててくださり、ありがとうございます」「私たちのために脳トレ大会を開催していただき、本当に幸せだと思っています」
はがきの片隅に書き込まれた感謝と喜びの言葉の数々。「やってよかった」。笑顔がこぼれる。
苫小牧市の拓勇東町内会文化教養部の部長を務めてもうすぐ2年。新型コロナウイルスの影響で予定していた行事が実施できなくなり、はがきを使った高齢者向けの脳トレクイズ大会を企画した。はがきに書いたクイズに挑戦してもらい、返信があった人に抽選で賞品を贈っている。今やクイズへの回答よりも通信欄のメッセージを楽しみに待っている自分がいる。
「時代が変わり、地域の高齢化が今以上に進んだとしても、人と人がつながる方法はきっとある」。図らずも、コロナ禍の経験は、未来を照らす道しるべとなった。
5歳から13歳までの2男3女の母親。結婚後は市内永福町に住んでいたが長女(13)が生まれた後、拓勇東町に転居した。縁もゆかりもない町。知らない人に囲まれての子育てとなったが家族で夏祭りや餅つき、運動会など町内会の催しに参加しているうちに顔見知りが増えた。
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ある時、町内会から「幼少年部の役員をやってほしい」と声が掛かった。同世代の母親たちと知恵を出し合って、クリスマスやハロウィーンなどの親子イベントを企画しながら町内会運営に必要な経験を積んだ。5年ほど同部の役員を務め、20年の春、文化教養部の部長に就任。さまざまな行事を計画したがコロナ禍ですべて中止となり、代替企画として同年6月、76歳以上の会員向けにはがきを使った脳トレクイズを試行した。「楽しい」「またやってほしい」と好評の声が多数寄せられた。
返信はがきにメッセージを書いてくれた人の一部とは、その後も手紙のやり取りが続いた。クイズの当選者から「ありがとう」と感謝の電話があったり、外出先で高齢者から「この前のクイズ、良かったよ」と話し掛けられたりすることはしばしば。今、集まる機会はほとんどないが、地域で暮らす高齢者たちとつながっている実感がある。
自分と同世代の中には、町内会に入会することに抵抗感を抱く人も少なくない。高齢化の進展による町内会の担い手不足は、世帯平均年齢34歳の拓勇東地区も例外ではない。それでも、返信はがきに切手を貼ったり、案内文を折ったりといった脳トレクイズのための作業を喜んで手伝うわが子の姿を見ていると、「地域のために働きたいと考えている若い世代もたくさんいるのでは」と思う。
市内でも若い世代が集中する自分たちの町にも、いずれ高齢化の波が押し寄せることは間違いない。でも悲観はしていない。「今までと同じ活動ができなくなったとしても、新しいことに挑戦すればいい。きっと、次の若い世代が力になってくれる」。わが子に目をやりながら力を込めた。
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高齢化の進展に伴い、地域活動の担い手不足や高齢者の孤立化などが課題となる中、安心・安全なまちづくりに取り組む人たちを紹介する。7回連載。