2018年9月に発生した胆振東部地震、新型コロナウイルス感染拡大による経済の低迷、それらに伴う人口減少など課題は山積している。ただ、そんな状況だからこそ、この仕事のやりがいがあるのかもしれない。課題解決のために学び、頭を悩ませながら、まちづくりに汗を流す人たちの姿を追い掛けるのは面白いとも感じる1年だった。
10月中旬、鵡川高校の女子生徒たちが、むかわ町観光協会とコラボして考案、商品化した韓国風のり巻き「むかわキンパ」を初めて販売した。
「むかわキンパいかがですか? ここでしか食べられない和牛を使用しています!」―。元気いっぱいの声につられてブースの前には多くの客が集まり、用意した110食分はわずか30分ほどで完売。今月上旬のむかわ町主催のイベントでも2日間とも完売する好評ぶりだった。すべてを売り切った時に見せた生徒たちの充実した表情は、今でも印象に残っている。
キンパを考案した背景にあるのは、町の人口減少対策として「若者を増やしたい」という切なる思い。特産品でもある近年のシシャモの不漁の現状を踏まえ、和牛や米、野菜など地元にある豊富な食材を使って「町を知ってもらいたい」という願いも込められている。たとえ卒業して町を離れても、またこの町に戻ってくるきっかけがそこにあれば―。取材を通じて、一つの商品にたくさんの思いが詰まっていることが分かった。
年明けには町内初のコスプレイベントも開催される予定で、同校が発信する地域をキャンパスにした取り組みが徐々に形になりつつある。まちの未来を切り開く高校生から次はどんなアイデアが生まれるのか―。考えるだけでワクワクが止まらない。
(石川鉄也)
終わり