北海道南部に位置する奥尻島青苗遺跡において、ヒスイ・ガラス・水晶・滑石の4種のビーズ素材で組み合わされた首飾りが1976年に発見された。
最も興味を引くのは、ヒスイで作られた長さ5センチの大型の勾玉(まがたま)である。頭部に3条の線が刻まれたこの勾玉は本州の古墳文化からもたらされたものだが、ここまでの優品はその中心地である西日本でも限られている。
さらに多彩なビーズ素材について見てみると、近年の科学分析などの研究成果によれば、ガラス製玉は西アジア~中央アジア産のものを日本国内で再加工されており、しかもその再加工の時期は古墳時代後期中葉~後葉と同時代後期末以降というように異なるグループに分けられることがわかった。水晶製玉は、ガラス製玉よりも新しく奈良時代の西日本で製作されたと推定されている。
さまざまな入手経緯を持つビーズが組み合わされ、一つの装飾品としてつなぎ合わされたこの首飾りは8世紀ごろの奥尻島にたどり着き、埋められたと考えられている。
地域と地域を越え、また世代と世代を超えて伝えられていくというビーズが持つ特徴が、この奥尻島から出土した首飾りから読み取れるだろう。
(国立アイヌ民族博物館研究員・鈴木建治)
「人類の美 ビーズ」はこれで終了します。
民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(白老町)の特別展「ビーズ アイヌモシリから世界へ」は5日まで開催。観覧料(ウポポイ入場料は別途必要)は大人300円、高校生200円、中学生以下は無料。