苫小牧市美術博物館は12月12日まで、企画展「ラムサール条約登録30年 ウトナイ湖 うつりゆく自然とその未来」を開いている。同館の江崎逸郎学芸員が展示にちなみ、ウトナイ湖の豊かな自然環境とその変化について4回にわたって解説する。
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ラムサール条約は、正式な名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、ウトナイ湖はその条件を満たした湿地として1991年に登録された。ウトナイ湖で確認された鳥類はこれまで270種類以上に上り、中でもハクチョウやカモ、サギなどの水鳥は半分近くの120種類以上が確認されている。
水鳥は、その多くが渡り鳥である。渡りの移動ルートは種類によって異なるが、おおむね北極圏やシベリア、カムチャツカなどで繁殖し、本州より南で越冬するなど長距離を移動する種類が多い。餌を補給することができ、ねぐらとして最適なウトナイ湖は、水鳥にとって旅の途中のオアシスのような場所なのだ。
ウトナイ湖を訪れる代表的な水鳥である国の天然記念物のガン(主にマガンとヒシクイ)は、渡りの途上である春と秋にウトナイ湖を訪れる。特に春は数万羽を超えるガンが集結する。早朝、目覚めたガンは日の出前の空が明るみだす頃、一斉に飛び立つ。湖の上空一面にガンが広がる光景や、一斉に飛び立つ際の「ドン」という爆発音のような羽音は、ウトナイ湖の自然の豊かさを象徴する光景だろう。
本展では、ウトナイ湖を訪れる渡り鳥約60種類のはく製を一堂に展示し、その種類の多様性を表現した。さらに巨大な円球スクリーンに世界地図を投影し、渡り鳥の移動ルートを視覚的に理解しやすいよう工夫している。
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午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。