「仕方ない」「早く平常化を」―。12日が期限となっている北海道の緊急事態宣言について政府が30日まで延長することを決めた9日、苫小牧市民の間では受け入れる声が目立ったが、飲食店からは「いつまで耐えればいいのか」とため息が漏れた。
「感染者数は減少傾向にあるが延長には賛成」と話すのは、木場町の会社員三浦友耶さん(30)。「スーパーでもマスクをしていない人を見掛ける」と個人の意識の緩みを心配する。政府は新型コロナウイルスワクチンの希望者への接種が完了する11月ごろをめどに行動制限を緩和する基本方針も決めたが「行動範囲が広がっても感染リスクを考えると怖い。2回目のワクチン接種を終えても(行動範囲は)変えなくていい」と述べた。
三光町の会社員伊藤遥さん(33)も宣言に慣れが生じ、十分な効果が得られていない現状を指摘し「長期間の我慢より、厳しい措置を短期集中で行ってほしい」と強調。「行動制限は若い世代のワクチン接種者が増え、感染者減少がもっと数字に表れてから見直すべき」と訴えた。
有明町の大井正美さん(79)は、市内の新規感染者数が減ってきたことを踏まえ、「ワクチン接種も進む中、全道一律で実施するのはいかがなものか」と述べた。
山手町の北洋大留学生ニュウチョウンバオチャンさん(21)は「感染拡大のリスクを考えると仕方ない」としながら、新学期が始まる13日以降もオンライン授業となることや友人らに会えないことに戸惑い「緊急事態宣言が何度も発令されることで、生活が困難になる人は多い」と訴えた。
錦町の居酒屋、海賊亭の五十嵐勝美店主(79)は「12日で終わると思っていたので厳しい」と打ち明けた。宣言期間中は午後5~8時の時短営業で、酒類提供を同7時までとした結果、売り上げが前年の同時期に比べ半分以下に。「休業したら錦町、大町の通りはさらに暗くなる。宣言終了後も急に活気は戻らないので何とか営業を続けたい」と話した。
錦町で酒類を提供する飲食店「cococafe(ココカフェ)」のオーナー村上智恵さん(38)は「9月は連休があるので宣言延長は予想していたが、今の状況が続くのはかなり厳しい」とため息をつく。宣言が発令された8月27日以降、夜間営業は休止中で、予約があった時のみ午前11時から午後3時の間で店を開ける。「テークアウトやオードブルのサービスをSNS(インターネット交流サイト)で発信し、何とか予約が入っている状況。いつまで、どうすればいいのという気持ち」と言う。行動制限緩和については「ワクチンを打ったからコロナにかからないわけではないので、本当に緩和していいのかという怖さがある。人出が多くなり過ぎても不安」と複雑な心境を吐露した。