例年より暑さが厳しかった7月下旬、むかわ町穂別博物館前のアースギャラリーで恐竜関連のグッズや地域の特産品などを持ち寄ったイベントが開催された。
主催したのは、穂別博物館に勤務する町内在住の若手女性3人でつくる団体「RAYOCHI(ラヨチ)」。アイヌ語で「虹」を意味し、「合併した鵡川と穂別、二つのまちの懸け橋となり、人と人をつないで町を盛り上げたい」と昨年末に旗揚げされた。彼女たちの働き掛けに、町内の飲食店、農家、恐竜関連グッズを販売する団体や事業所が賛同。会場内はお土産を求める買い物客や化石クリーニング体験をする家族連れでいっぱいになり、にぎわいと笑顔が地域に久しぶりに生まれた。
胆振東部地震に新型コロナウイルスの感染拡大―。命をおびやかす「災害」が度重なる中、逆境に立ち向かう人たちの姿と活動は、地域にとって一条の光となった。
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むかわ町、穂別地区でも「まちなか再生」は震災以降、喫緊の課題になっている。旅館2軒は、3年前の地震で建物が使えないほど被害を受けるなどして廃業。地球体験館は、2019年3月に閉館して今は建物が残るだけとなった。とまこまい広域農業協同組合(JAとまこまい広域=本所厚真町)が営業する「Aコープ穂別店」も、旧事務所と店舗が大規模損壊したため仮店舗で営業してきたが、来年1月限りで閉店する方向で調整に入った。加えて昨年から感染症の拡大が続き、町内の行事などは軒並み中止。飲食店は休業や時短営業を余儀なくされている。
二つの「災害」に見舞われ、先行きが見通せない中、彼女たちの取り組みは心身共に疲弊した住民たちに「勇気」を与えた。町役場穂別総合支所の斉藤春樹支所長は「(町民の心にエネルギーが生まれることを)地域の人たちがいろんな分野で考えてはいるが、仕事や私生活など日々に追われ、なかなか形にできなかった。(ラヨチのイベントを通じ)目に見える活動は大事だと改めて思った」とたたえ、「まちなか再生も含めた機運になれば」と期待する。
町では昨年度までの5年間で掲げた恐竜ワールド構想推進計画」を見直し、穂別地区で見つかった恐竜化石を「単なるまちづくりとしてではなく、町の課題解決につなげる」ために生かす取り組みを進める。
直近では、鵡川高校野球部が震災後に使っていた仮設生徒寮の一部を再利用し、サテライトオフィスを市街地に整備。都市部企業の受け入れ先として整えるほか、地域の「やりたい」を実現できる、事業展開の拠点にしていく考えだ。また、地域おこし協力隊制度を活用して穂別キャンプ場の機能を充実させ、利用を促進させていく。
町が19年に策定した復興計画において、現在は「博物館周辺エリアの再整備」の真っただ中。町経済恐竜ワールド戦略室は「博物館周辺の整備について方向性を示すことができれば」と話す。行政と民間で知恵を振り絞って、空き家・空き地対策や人手、受け皿の確保など、実現に必要な数々の課題を解決していく。
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