アイヌ民族文化財団(本部札幌市)は、道内のアイヌ古式舞踊保存会と連携し、白老町のアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)で各地の伝統舞踊を披露する活動に乗り出した。国の重要無形民俗文化財に指定されている古式舞踊を紹介し、アイヌ文化の深みと多様性を伝える。今年度は来年2月にかけて毎月上演する。
アイヌ古式舞踊は、儀礼や祭礼の際に舞うアイヌ民族の伝統芸能。イオマンテリムセ(熊送りの踊り)など信仰や暮らしに根差した踊りや歌には、地域ごとに特色がある。アイヌ民族文化財団は、管理運営するウポポイに道内各地の保存会を招き、各地域で伝承されている古式舞踊を来場者に鑑賞してもらうプログラムを検討。北海道アイヌ古式舞踊連合保存会(大川勝会長、17団体)の協力を得て今夏から開始した。
今年度は、同連合保存会に所属する浦河アイヌ文化保存会、帯広カムイトウウポポ保存会、白老民族芸能保存会、札幌ウポポ保存会、千歳アイヌ文化伝承保存会、阿寒アイヌ民族文化保存会の6団体が出演する。7月には浦河と帯広の団体が上演。今月は14、15両日に白老民族芸能保存会(長谷川邦彦会長)のメンバー13人がウポポイ体験交流ホールでクリムセ(弓の舞い)、サロルンチカップリムセ(ツルの舞い)、ウポポ(座り歌)など6演目を披露した。同財団は来年2月にかけて各地の保存会を招き、毎月2~4日程度、土、日に公演プログラムの日程を組む計画だ。
ウポポイでは若手職員による古式舞踊が上演されているが、各地域で受け継がれてきた伝統の舞いを加えることで、同財団の担当者は「深みのあるアイヌ文化と、その多様性を伝えたい。各地の保存会と若手職員の交流の機会にもなれば」と言う。プログラムを通じてウポポイと各地域が関係を深め、アイヌ文化全体の振興につながることも期待し、来年度の実施も検討する。
同連合保存会の事務局を持つ北海道アイヌ協会(大川勝理事長)の須貝行一事務局長も「ウポポイで踊りを披露することは各保存会メンバーの励みにもなるのでは」と言う。白老民族芸能保存会は9月にも上演する予定で、長谷川会長は「各地の風土から生まれた踊りを発信し、アイヌ文化の地域性について理解してもらえれば」と願う。
アイヌ古式舞踊は、1984年に国の重要無形民俗文化財となり、白老民族芸能保存会をはじめ道内17保存会が保護団体に指定されている。2009年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産にも登録された。