―ウポポイ開業1年をどう受け止めているか。
「新型コロナウイルス感染拡大という状況の中、政府目標の100万人を大きく下回ったものの、25万人以上の来場があった。小中学校の教育旅行についても初年度より見学予約が多いと聞いている。先住民族アイヌの歴史や文化の発信拠点として、今後も施設の取り組みに期待したい。国や道などによるウポポイのPR活動も盛んに行われ、白老町の知名度は格段に上がったと思う」
―ウポポイ開業による地元白老町への経済効果はあったか。
「開業による経済効果はそれなりにあったと受け止めている。コロナ禍の中で観光需要は道内のどのまちも冷え込んだが、2020年度の白老町への観光入り込み客数は177万人超と前年度比で11%伸びたのは、開業効果とみている。白老がウポポイの整備地として決まって以降、カフェなど新しい飲食店が増え、観光客をもてなす場が多くなってきたことも、効果と言えるのではないか」
「新型コロナのワクチン接種が進んでいくと、ウポポイ見学などで白老に訪れる観光客も増えてくると思われる。今はウポポイ来場者の95%が自家用車を利用しているなど、個人・小グループ旅行が主だが、これからは団体旅行の観光客も増えると予想されるので、町内の飲食店やアイヌ文化関連の事業所などと連携を取りながら経済効果を取り込みたい。白老おもてなしガイドセンターも立ち上がり、観光客に白老の魅力を伝え、町内を周遊してもらう仕組みづくりができればと思う。観光客の交通手段として、ウポポイ開業に合わせて運行を開始した交流促進バス・ぐるぽんも、停留所の位置などを考えながら観光客の町内周遊に生かしたい」
―ウポポイに対する町民の反応をどうみるか。
「国の交付金を活用した2020年度の町の事業として、ウポポイ入場料が1年間無料になる年間パスポートを発行した。入場料が必要な高校生以上の1万5699人を対象に申請を受け付けたところ、33・9%が申請した。1日券発行のみの希望者を合わせると対象者の35・3%となり、ウポポイへの町民の関心は一定程度あると受け止めている。今後の課題として、町民により親しまれる施設となるよう、ウポポイに町民が関われる方法を模索したい。例えば博物館友の会をつくって町民がボランティアで施設案内を務め、施設との関わりを深める形なども考えられる。町とウポポイも連携し、互いにできることを考える体制を築きたい」
―ウポポイを教育にどう生かすか。
「白老町の小中学校ではふるさと学習と称し、子どもたちがアイヌ文化を学ぶ機会を設けている。ウポポイができたことで、より幅広く学習できる環境となったと思う。また、今年度、町のアイヌ施策基本方針を改定する。社会にマッチした内容に見直し、地元アイヌ文化の振興や教育活動の推進も図りたい」
プロフィル 戸田安彦(とだ やすひこ) 白老町出身。札幌大学卒。会社役員を経て2011年11月の白老町長選で初当選。現在3期目。52歳。