食べることが好きで、おいしい食べ物を追求している。苫小牧市内でパン店を開業後、移転先にカフェを併設した。道産食材をふんだんに取り入れたメニューを味わうことができる。道産品の活用や業界の発展を考え、これまで培ってきた技術を開業希望者に伝えようと準備を進める。
1977年1月、登別市で生まれた。温泉ホテルで働く料理人の父親、配膳係の母親の背中を見て育ち、見よう見まねで玉子焼きやホットケーキを作った。甘い物が好きで将来、料理の道へ進むことを小学生の時に決めた。「自然と料理に興味を持つようになった。30歳までに独立しようと決めていた」と話す。
高校時代まで同市内で過ごした後、10代後半から苫小牧市内のパン店に勤め、基本を学んだ。パン以外の料理やケーキも作れるようになりたいと考え、静岡県伊豆市のホテルや新千歳空港のレストラン、札幌市内のパン店などで修行を重ねた。特にパンは奥が深く、22~23歳の時、その魅力に取りつかれた。
2006年1月、29歳で独立し、パン店「ボンヌ・ジュルネ」を苫小牧市大成町にオープン。50種類ほどのパンを販売し、すぐに人気店となった。開店後3年間は1日の睡眠時間が3時間という忙しさだった。
大盛況だったが、ゆくゆくはカフェも展開したいと考え、09年4月に見山町に移転し「ル・ブーランジェOZO(オゾ)」を開店した。苫小牧川沿いで約400平方メートルの土地を活用し、約10種類の食パンなどを購入できるパン店とカフェを開業した。3年後に法人化し、従業員11人の代表として経営を担い、本物のおいしさや道産食材にこだわる。
独立から15年が経過した今も、大成町時代から変わらず訪れる常連客がいる。製菓衛生師、調理師、1級パン製造技能士―と次々に資格を取得し、勉強を欠かさない。近年、苫小牧でも個人店や本州資本の出店が目立つようになった。競争は激化するが、「お客さまが店を選ぶ時代。店によって製法が違う。もっと増えてほしい」と思う。
今年5月、新規出店を目指す人をサポートする新会社を立ち上げた。通常、起業には多額の費用が必要だが、小麦や機械を安く仕入れて出店者に販売し、初期投資を抑えられるようにした。パン作りの技術も惜しまず教える考えだ。
「人は何をおいしいと思うのか。また食べたい、と思ってもらうにはどうすればいいか」―。これまでの人生でいつも考えてきた。「近くの食材、余計なことをしない食材」を求めて勉強を続ける。「生地に添加物は使用しない。常に、子どもに食べさせることができるかを心掛けている」と信条を語った。
(室谷実)
小野 洋(おの・ひろし) 1977(昭和52)年1月、登別市生まれ。10代後半から苫小牧市や札幌市のパン店などで修行を積み、2006年に独立。米粉や全粒粉などを使用した食パンなど、道産食材を積極的に使用する。苫小牧市見山町在住。