1 猛威振るう変異株 半数は無症状 家庭内感染が増加

  • 3度目の緊急事態宣言 コロナ感染急拡大, 特集
  • 2021年5月17日
胆振管内の新型コロナウイルス週別感染者数の推移

  「胆振管内でも変異株への置き換わりが進んでいると想定される」―。10日に胆振総合振興局が開いた新型コロナウイルス感染症対策の地方本部員会議で、胆振管内の最新の感染状況が報告された。ゴールデンウイーク後の8日から、日別の新規感染者数は連日2桁を記録している。感染力が強いとされる変異株が猛威を振るい、感染拡大が加速している。

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   胆振管内の感染状況は変化し続けている。昨年2月22日の初確認以降、道が独自の緊急事態宣言を出した2月28日~3月19日と、国が全国に緊急事態宣言を発令した4月16日~5月25日の「週別」感染者数は、0~5人とわずかだった。未知のウイルスと対峙(たいじ)する危機意識が強く、対策の強化で一定程度の抑え込みが図られていた。

   しかし、夏以降は政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」などで人の往来も活発になり、9月の4連休(19~22日)以降は感染が拡大。10月に管内で初めてクラスター(感染者集団)が発生し、週別感染者数も10人を超えるように。12月の感染拡大ピーク時はクラスターが5件も発生し、週別感染者数も100人の大台に乗った。

   胆振管内の感染状況は全道、札幌市と同様に増減する傾向にある。中でも苫小牧市は、札幌の通勤圏で往来も活発なことに加え、大規模な工場や事業所が立地し、若い労働者も多い。行動範囲が広い若年層を中心に、飲食を伴う会合や、休憩室や喫煙所をはじめとする職場内などで感染が確認され、さらに高齢者や子どもにも拡大。各所でクラスターが発生し、そのたびに感染者数を押し上げる構図だった。

   年末年始の感染再拡大と対策の再徹底を受け、今年2月以降は管内の週別感染者数もほぼ1桁で推移したが、ここに来て札幌と歩調を合わせるように急拡大。4月上旬以降は10人以上が続き、5月10日の週は過去最多の168人に達した。一方でクラスターは4月が3件、5月は1件とむしろ減っており、変異株への置き換わりを背景に市中感染の拡大をうかがわせる結果となっている。

   10日の地方本部員会議でも、最近の感染事例は無症状の感染者が全体の5割を占め、家庭内や職場内で無意識、無自覚のまま広げている恐れがあることが報告された。要因の一つと推測されるのが変異株の存在。3月に管内でも初めて1人が確認され、4月は感染者82人のうち30人が変異株と判明している。

   苫小牧保健所は「学校や職場などは感染対策が進み、クラスターは以前のように発生していないが、家庭内感染が多くなっている」と指摘。「感染を家庭内に持ち込まないことが大事。家に帰ったら手洗いをするなど、感染防止対策の徹底をいま一度お願いしたい」と強調している。

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   新型コロナウイルスの特別措置法に基づく国の緊急事態宣言が16日、北海道に発令された。道独自の発出を含めると3回目の宣言。感染の急拡大は胆振管内でも顕著で、厳しい局面を迎える各現場の状況を追った。

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