苫小牧市が新型コロナウイルス感染症対策の支援策を考える上で、根拠の一つにしたのが影響調査の結果だった。昨年9月1日を基準日とし、市内の全7323事業者を対象にアンケートを実施。約25%の1824事業者から回答を得て、コロナ下の経営状況、必要とする支援策、働き方などの実態を把握した。市担当者は「回答数が多く、精度の高い調査になった」と協力に感謝する。
昨年4~8月の経営面の影響を聞いた項目では、約7割が「マイナスの影響」と回答した。特に国が緊急事態宣言を出した4月と5月、幅広い業種で売り上げの減少が顕著だった。中でも飲食サービス業は同期間、前年同月比で30%以上の減収となった事業者の割合が8割にも達した。
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外出自粛ムードが広がれば、地域経済に深刻な打撃を与える―。それを明確に示した調査データを踏まえ、市は支援策の構築を最優先した。今年1月には国の3次補正予算の成立前にもかかわらず、年末年始に単月売り上げが同30%以上減った飲食店を中心に、1店舗当たり10万円の給付に踏み切った。
本来なら書き入れ時の年末年始、繁華街は閑散としていた。昨年秋以降、市内でも感染確認やクラスター(感染者集団)の発生が相次ぎ、警戒感を強めていた市が国に先駆けて打ち出した支援策だった。担当者は「緊急事態宣言下と同様の影響が出るとみて、アンケートを参考に支援を検討した」と振り返る。
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一方で、市の支援策には「救える限界」も見え隠れした。アンケート調査でも国や道、市の各支援策を「利用しない」と回答した事業者が約4割の812事業者に上り、うち46%が「(支援対象の)基準を満たさない」と答え、「利用方法や内容が分からない・知らなかった」も9%あった。
自由回答には、支援が行き届いていないことを示す記述も見られた。「感染防止対策への支援」「宅配事業、宅配委託業者への助成」「設立間もない事業者への支援」など、具体的な取り組みの後押しを求める声が寄せられた。給付要件の「売り上げ減少率の緩和」や、「パソコンやスマホがない人も申請できる環境を」「手続きの簡略化」など申請方法への要望もあった。
市は調査データを参考にしながら関係機関や業界からの情報収集を続け、地域経済の実態把握に努めるとしている。状況悪化の機微をいち早く読み取り、効果的な施策につなげるにはどうすればいいか―。行政の手腕がかつてなく問われている。