第1部 2 「強い店」目指し挑戦 影響長期化 出店見送る

  • 検証 コロナ禍 支援編, 特集
  • 2021年2月24日
複雑な思いを抱えながら開店準備をする佐藤さん

  胆振管内で新型コロナウイルス感染拡大が続く中、不安を抱えながら年を越した苫小牧市大町の居酒屋「izakaya草―sou―」店主の佐藤伸也さん(36)。書き入れ時の年末年始、売り上げが前年の1割程度まで激減した。「感染が広がり始めた頃は、ここまで長引くとは思わなかった」。何とか乗り切った1年を振り返った。

   店の売り上げは昨年、道や国の緊急事態宣言下で打撃を受け、7~10月に回復の兆しが見られたが、年末に向けて徐々に下降した。「来店してほしいが『自分の店から感染者が出たら』という恐怖は常にある。集客することもできなかった」。SNS(インターネット交流サイト)の告知や広告掲載も控え、道内の飲食店でクラスター(感染者集団)が発生するたび、複雑な心境を抱えた。赤字続きでコロナ終息も見通せず、今年予定していた2店舗目の出店を見送った。

   一方で、常連客が「店を応援したい」と足を運んでくれ、その気持ちに応えるために営業を続ける。「このままでは苫小牧の繁華街が廃れる」との危機感も強い。

   休業要請への協力金や支援金、持続化給付金をはじめ貸付も利用した。現在は家賃支援給付金を申請中で、雇用調整助成金の申請も考えている。「頂いた支援は営業損失の補塡(ほてん)というより、この状況に負けない『強い店づくり』に向けた投資だと思う。待っていても何も変わらない。感染症と営業の両面に危機感を持って、いろんなことに挑戦するしかない」と力を込める。

   道産小麦をオリジナルブレンドした冷や麦、冷凍シューマイなどの開発、販売も進める。人数制限を設けながら他店と共同で、ディナーも提供する企画も考えている。周りでは夜営業だけでは継続が困難になり、ランチの提供や宅配サービス、テークアウトなどの新規事業に活路を見いだす店舗も多く、「サービス機能の向上に向けた支援がより充実すれば、営業を維持できる店舗も増えるのでは」と分析する。

   コロナ下で食材が無駄にならないよう、保存が利く調理方法を取り入れる工夫もしている。平日は売り上げゼロの日もあるが、仕入れはできる限り減らさない。「飲食店には支援があるが、(取引先の)卸売業に支援はない」という思いからだ。「卸売業が倒れてしまうと、自分たちも困る。少しでも力になれれば」と業界全体で支え合う姿勢を強調し「事業支援の範囲をもっと広げてもらいたい」と願っている。

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