新型コロナウイルス感染が苫小牧市内で初めて確認された昨年2月下旬、真っ先に中止の判断を迫られたイベントの一つが、毎年3月の第1日曜開催の「技能祭」だった。本来なら第40回の節目を迎えるはずだったが、主催する苫小牧地区技能士協会の福森希志雄会長は「感染を広げかねない。中止するしかなかった」と振り返る。
市内外から毎年4000人以上が訪れ、技能士がそれぞれの分野で熟練の技を披露し、子どもたちにものづくりの魅力を伝えてきたが「教えるときは手取り足取りで、基本的に『密』になるイベント。特に苫小牧は規模が大きい」。2020年は道内46カ所で技能祭が企画されたが、実際に開催できたのは比較的規模が小さい2カ所のみ。今年も苫小牧は早々と中止を決めた。
一方、「少人数で距離を空け、密にならずにできる技能交流はある」と考えており「来年こそは技能祭を復活させたい」と語る。その前段として今年は11月10日の「技能の日」に合わせ「感染が広がらないことを大前提に、ものづくり教室か何かを11月に開いて市民に技能をアピールしたい」と意気込む。
そもそも技能士は慢性的な成り手不足。苫小牧の協会には14職種、会員304人が所属し、優秀な人材が育っているが、継続した後継者の育成は欠かせない。「会社内や職人同士などでの技能の伝達、伝承は感染に気を付けながらも普段通り。現場でクラスター(感染者集団)も出ていない」と指摘。「やれることからやっていかないと」と話す。
コロナの影響度合いは職種でまちまちだが、建築分野はもともと人手不足。調理技能士が特に大きな打撃を受けるなど、課題は山積している。
職種によっては「一人親方も多い」と言い、コロナ下で資金繰りなどの厳しさが増す中、「地元金融機関が応援ローンの商品を出してくれるなど、技能士を支えようという動きがあることに感謝したい」と強調。技能士に仕事が流れるよう上部団体と足並みを合わせ、行政や経済団体などに強く働き掛けており「技能士の処遇向上にも引き続き取り組む」としている。