現代において、ロボットは人間の生活の場にも登場しつつある。実用的なロボットやペットのように愛玩するためのそれとは異なる、人間社会に自然に溶け込むようなロボットの実現はいかにして可能だろうか。ロボットが単に業務を遂行するだけではなく、人間社会に参加した際には、どのようなコミュニケーション能力が必要とされるだろうか。
ロボビーは、人と関係を築きながらコミュニケーションするロボットを実現するため、石黒浩を中心とし、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)によって開発された。このロボットは、頭と腕といった人と似た身体を持ち、上半身の身体表現によって人との関係を築く。具体的には、小首をかしげる、二つの目を動かし、相手と視線を合わせるなどの動作をすることも可能である。
同ロボットは、人とロボットのコミュニケーション研究のための等身大ロボットプラットフォームとして、北海道大学大学院情報科学研究院でも研究実験に利用されてきた。
人間とロボットとのコミュニケーションを考えるとき、またロボットの身体表現とそれに対する人間の反応を考えるとき、ロボット研究は、翻って人間についてのより深い考察につながるのかもしれない。
(苫小牧市美術博物館 学芸員 大谷明子)(おわり)