⑨樽前山7合目ヒュッテ管理人 登山者の変遷見守る、感染対策徹底し対応

  • 暮らしの記録, 特集
  • 2020年8月10日
入山者の名簿を確認する鈴木さん

  きょうは山の日。近年の登山ブームにコロナ禍が加わり、「密」になりにくい屋外環境のレジャーに注目が集まる。樽前山7合目ヒュッテの管理人で駐車場の管理などに携わる鈴木統(はじめ)さん(68)は「『どこにも行けないから山に来た』という人も多いのではないか。登山ならいいと思っているのかもしれない」と分析する。

   苫小牧市観光振興課によると、今年4~7月に7合目ヒュッテから樽前山を登った人は1万5657人。前年同期と比べて約3500人多い。鈴木さんは「今年は午後2、3時すぎに来る車が増えている」と感じる。従来は午前中に駐車場を訪れる人が多かったという。

   数年前から軽装の登山者が目立つようになったが、今年はさらに増えた様子で半袖、短パン、サンダル姿や水を持っていない人もいた。「これまで登山をしなかったが、最近山に登り始めたという人ではないか」と推測する。

   歌志内市で生まれ、11歳で苫小牧市に移住した鈴木さん。2016年に6代目の管理人に着任した。元自動車整備工で手先の器用さから木製のいすなどを製作。駐車場の管理や登山道の巡回などの仕事を通して、登山者の変遷をつぶさに見てきた。

   自身も新型コロナウイルス感染への警戒を強めている。登山者と会話する時は距離を取り、なるべく近寄らないようにする。「たくさんの登山者がいると緊張する。市からは『あなたの代わりはいない』と言われている。やはり感染するのは怖い」と胸中を吐露。以前は夕方に下山した登山者を、休憩のためヒュッテで受け入れることもあったが、今は断っている。

   駐車場での誘導業務に当たるシルバー人材センターのスタッフに対してもマスクの着用を求め、会話する際は距離を保つよう促す。登山者も警戒しているようで「誘導のため車の窓を開けるよう呼び掛けても、『嫌だ』と断られることもある」と話す。

   市の嘱託職員という立場で、週5日をヒュッテで生活する。午前3時に起床し、日の出を見るため訪れた登山者に対応。冬も駐在する。コロナ禍でもヒュッテでの日常生活自体は大きく変わらない。紅葉シーズンの秋に向けて登山者も増えそうで「まだ薬もないし、どこにウイルスがいるかも分からない。今まで通り感染予防策をしっかりしていく」と力を込めた。 (平沖崇徳)

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