宅地、工場、ゴルフ場など開発が進んだとはいえ、苫小牧市内の勇払原野にはまだまだ自然が残されています。その自然環境を知ろうとするときの基準の一つとして、野鳥の存在が挙げられます。野鳥の個体数の変化を見ると、その地域の自然環境の変遷を垣間見ることができます。野鳥が増えたから環境が豊かになった、減ったから破壊された、という単純な話ではありませんが、現状の確認と保全策への道しるべになります。野鳥がいてくれてよかった! と思う理由です。
ウトナイ湖サンクチュアリでは1981年の開設以来、鳥類の調査を続けています。この地域にとどまらず世界的に見ても「環境」にとっては激動の40年、大きく数を減らした野鳥もいます。現在でもわずかに残るそれらの野鳥を確認することは、危機にひんしている環境への「気づき」となります。
今年も雪解けと同時に勇払原野各所での調査を行っていますが、私が確認した一種、アカモズについて書いてみようと思います。
その名の通りモズの一種で、腹部の白と上面の赤褐色のコントラストが美しい、スマートな野鳥です。背筋をピンと伸ばし、灌(かん)木などの見晴らしのいい枝先に止まり、尾をぶらぶらさせながら辺りの様子をうかがいます。一瞬飛び立ってすぐ同じ枝に止まると、その口には昆虫がしっかりとくわえられています。足で押さえ解体し食します。名ハンターというわけです。そんなアカモズの動きを6・7月は週に1度のペースで確認しましたが、近年数を大きく減らしている野鳥の一つと言われており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧1B類に分類されています。
私たちは毎年、調査の結果を繁殖期の終わった11月ごろにプレスリリースという形で発表しています。野生動植物は減っていくもの、という考えが一般的な現代ですが、近年数を増やしているタンチョウのように保護活動によって数が増えた例もあります。次の40年でアカモズの数がV字回復し、「40年前は希少種だったんだって、信じられないね」という会話が聞かれることを私は信じています。そのころにはすっかり鳥好きのおじいさんになっているでしょう。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ 中村太一レンジャー)