苫小牧の夏の風物詩、とまこまい港まつり(実行委員会主催)。今年は7月31日~8月2日の日程で通算65回目が計画されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、中止を余儀なくされた。地元の祭りを盛り上げようと、それぞれの立場で参加を予定していた人たちは、複雑な思いで今夏を迎えている。
港まつりは苫小牧の夏を盛り上げる一大イベント。毎年、メイン会場の中央公園(若草町)で出店やステージイベント、中心街で市民おどりパレード、ポートカーニバルなどを展開している。実行委によると、昨年は約35万8000人が訪れた。
実行委は今年も例年同様に準備を進めていたが、4月下旬にコロナの流行を踏まえて中止を決めた。実行委事務局を置く市観光振興課の松田清彦課長は「人命を守るための苦渋の決断」と説明。「次回は皆さんにより楽しんでもらえる催しになるよう、関係機関・団体と協力したい」と語る。
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同まつりの中止に肩を落とす人は多い。メイン会場の納涼ビアガーデンに出店してきた、苫小牧弁当仕出協同組合の直山昭一郎専務理事(64)は「祭り期間中の売り上げは2000万円以上。今年はそれがゼロになった」と残念がる。来年を見据え、「座席を減らすなどのコロナ対策を今から考えないと」と話す。
メイン会場で、お化け屋敷を開設してきた苫小牧青年会議所(JC)の阿部和法理事長も「港まつりは市民にJCを知ってもらう一番いい機会」とがっかりした様子。今年もメンバーやボランティアが企画を練り、7月から準備を本格化させる予定だった。
一方、JCは子どもたちの夏の思い出づくりの機会を提供しようと、少年野球大会や小中学生向けのスタンプラリーイベントも企画。イベントの相次ぐ中止に危機感を抱いての行動で、阿部理事長は「こんな時だからこそ新たな取り組みが必要」と力を込めた。
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パレード参加に熱を入れてきた人たちも、例年と違う夏を戸惑いながら過ごす。市民おどりパレードで何度も最優秀賞に輝いてきた柏木町町内会は例年、7月に町内会館で踊りを練習しているが今年は取りやめに。渡辺正幸文化社会部長(72)は「毎年最高賞を目指して練習してきたので残念だが仕方ない」と語る。
まつり最終日のポートカーニバルに出場し、「勇払千人隊踊り」を披露してきた勇払中学校の生徒たちも例年、7月に地域住民から踊りの指導を受け、上級生が下級生に教えることを伝統にしてきた。松本莉佳さん(3年)は「毎年行ってきた練習が今年はないので、少し変な感じ」と率直な感想を述べた。
全校生徒56人を率いる隊長への立候補を考えていたという浦川颯太さん(同)は「中学校生活最後の年に出場できず、とても残念」と強調。「来年は僕たちの分まで頑張ってよりよい発表をしてもらいたい」と後輩に思いを託した。コロナの終息、来年の開催を心から願っている。
(とまこまい港まつり取材班)