最大効果の交通体系に 鉄路は構造改革を 北大公共政策 大学院客員教授 石井(いしい) 吉春(よしはる)さん(66)

  • コロナ時代の道しるべ, 特集
  • 2020年8月1日
「柔軟で質の高い交通を」と話す石井さん

  北大公共政策大学院客員教授で、苫小牧東部地域で土地を造成、分譲する第3セクター「苫東」の会長を務める。道運輸交通審議会会長、JR北海道の経営改善委員などを歴任してきた物流、人流のスペシャリストだ。新型コロナウイルス感染拡大で、北海道は特に人流が打撃を受けた。石井吉春さんは「最小コストで最大効果を出す交通体系を考える必要がある」と提言する。

   北海道の人流、交通政策にはコロナ前から「二つの大きな課題があった」と指摘する。プラス面で道内7空港の一括民営化、マイナス面はJR北海道の経営問題だ。

   道内の鉄路は広大な都市間を点と点で結ぶため、列車が日に数本しか走らなくても保線に膨大な費用が掛かり、そもそも赤字を解消できない構造。「鉄道を『全部いらない』とは思わないが、『全部残す』というのも無理がある。好機との兼ね合いで考えないと」と話す。

   インバウンド(訪日外国人旅行者)を中心に観光客が増え、空路で成長軌道にあった新千歳のエネルギーを地方に振り分けるのは当然として、膨大な赤字路線を抱える鉄路も磨き上げるチャンス―と石井さんは見ていた。「人の流れに沿って柔軟で質の高い交通を提供できれば、2次交通を充実させる戦略も描ける」と。

   しかし、コロナ禍でインバウンドが姿を消した。「人流は国内観光が主体になり、一定程度伸びる要素はある。ビジネスの人流はしばらく動かなくなるが、北海道はもともと(ビジネスの比重が)小さいので、全体のダメージはそんなに大きくない」と分析。「総合交通」の視点で議論を加速させる必要性を説く。

   「これまで鉄道はただ『守る』という議論だった。コロナ禍を含め、地域がリスクに目覚めて自ら考えないと」と構造改革によるソフトランディングを目指す。「上手に交通基盤を守れば、新たな人流もつくり出せる。鉄道を捨てても、守るべき交通はある。未来は暗くない」と力を込める。

   7月30日に道がコロナ対策を検証する有識者会議を立ち上げ、座長に就任した。「コロナはかなり長引く。感染リスクを抑えながら、経済との両立を目指すための議論を引き出したい」と強調。将来の第3波に備える。

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