「日本語オノマトペ辞典」の編者、小野正弘さんが、新著「オノマトペ 擬音語・擬態語の世界」(角川ソフィア文庫)で、方言の中にある、個性的で温かな言葉たちを紹介している。
オノマトペは何かの音を言葉で表すゴーン、キーンなどの擬音語や、回転を「クルクル」のように状態を表す擬態語のこと。子ネコの足の肉球を「プニプニ」と表現する絶妙な新語、造語の世界。
方言の章では岩手県出身の著者が、高校の同級会での「あっぺとっぺ」論議を紹介している。「つじつまの合わないこと」との辞典の説明に「服の裏表が逆の時にも使う」との意見があったとか。北海道弁の「あっぺこっぺ」と同じだ。青森県の「体がゆきゆき揺れる」、宮城県の「ほこりで、床がざしざしする」、山梨県の「あばちゃばする(慌てる)」などが並び、繰り返し読んでも楽しい。
北海道の内陸育ちの自分には面白いオノマトペがない。雪はチラチラ、さらさら、しんしんと降るだけ。体調も頭痛はズキズキ、胸はドキドキぐらい。道南の浜育ちの家人は、おなかの違和感を「腹がにやにやする」と言い放つ。
新型コロナウイルスが、世界中でぐいぐい勢力を広げている。日本政府は景気浮揚だ感染防止だとウロウロを繰り返すが明確な指針は見えにくい。布マスクの追加配布も不評だ。国民はウイルスの接近におびえ、政府の「あっぺとっぺ」にいらいらを募らせる。(水)